政府税制調査会が設置した専門家会合のうち「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」は11月13日に第1回会合を開いた。
会合では、社会全体及び税務関連情報のデジタル化(デジタルシームレス)の構築等に向けた議論が行われたほか、税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例を国税庁が示し、課税処分を行うための十分な証拠収集が特に困難な国際的な経済取引等についての問題点を挙げた。
国外取引に関し資料の提示等を拒否され全容解明に困難を来した事案では、調査対象法人は、X国の非関連会社X社に対して広告宣伝費等の名目で多額の経費を支払っていたが、X社設立には過去に脱税指南者が関与している疑いがあった。また、調査対象法人のA社長はY国所在のY社代表も務めており、外国当局からの情報によれば、X社からY社に資金の移転が認められ、A社長の国外出張時期にY社口座から現金出金があることが把握された。これらの事実から国外法人を通じたA社長への資金還流も疑われたが、調査対象法人及びA社長からは、本件取引の取次を行った代理人と連絡が取れないことや、Y社は調査対象法人と取引関係にない別法人であること等を理由に関連資料の提出が得られず、事実関係の解明に至らなかった。
このように、仮にX社やY社が国内に所在していれば、反面調査により必要な情報を追加的に得ることが可能だが、国外の場合には執行管轄権の制約もあり事実関係の把握に困難が伴うことを問題点としている。