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新しい資本主義実行計画改訂版

  政府は6月7日、成長戦略として掲げる「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版案」を公表した。昨年の改訂版に引き続き、中小企業の賃上げ支援を柱としているほか、事業承継支援として税制の要件緩和やM&Aの円滑化などが盛り込まれている。

 新しい資本主義実行計画は、令和4年(2022年)6月に岸田政権の“肝入政策”としてとりまとめられ、以降、毎年改訂を行い推し進められている政策。
 内容は今回も、下請法の運用基準の見直しを進めた形で、中小企業の賃上げ支援をメインとして盛り込んでいるが、企業存続で問題となる事業承継関係について踏み込んだ内容を明記している。
 事業承継の状況をみると、後継者が不在の企業のうち7割以上は黒字企業が占めており、承継者についてのストックベースでは、同族承継が低下して企業内部からの昇格やM&Aによる外部からの就任が増加しており、後継者が不在の企業は低下傾向にある。そのような中ではあるが、多様な事業承継を支援するための金融・税制等の支援措置や、経営人材の確保に官民を挙げた広範なマッチングを進める必要性を挙げている。
 事業承継税制に関して、現行では制度利用には役員就任要件(実際の承継時に、後継者が役員に就任して3年以上経過している必要があるという要件)を満たす必要があり、特例措置を利用する場合には、令和6年12月末(実際の税制上の承継期限である令和9年12月末の3年前)までに後継者が役員に就任していなければならない。しかし東京商工会議所の調査では、後継者の決定までの期間は「3年以上」とする回答が4割となっていることから実行計画では、「来年以降に事業承継の検討を本格化させる事業者にとっては、今年12月までに後継者を役員に就任させることは困難である」として、同税制を最大限活用する観点から“役員就任要件”の在り方を検討するとした。この結果、令和6年度税制改正に続き、7年度税制改正でも事業承継税制の見直しが行われる可能性が高くなった。
 また、有能な人材(経営者)を広く登用し、事業承継を更に促進する観点から、第三者への事業承継を促進する税制の在り方について検討を深めることを計画に記載した。
 その他、事業承継で支援を行う「事業承継・引継ぎ支援センター」や「商工団体」、「税理士会」とも連携しつつ、制度の周知徹底に取り組むことにより最大限の活用に取り組むこととされた。さらに、中小・小規模企業の経営をサポートする立場の税理士・顧問弁護士・地域金融機関等の専門家が、事業承継・事業再編、M&Aに関する制度の理解が十分でない場合があるとして、専門家への制度の周知徹底を行い経営者への適切な助言につなげる。
 政府では、実行計画を令和7年度予算編成や重要政策の基本的な指針「骨太方針」と併せ閣議決定を行う予定にしている。
 一方、各省庁ではこれらの内容を踏まえて、8月末までの令和7年度税制改正要望提出に向けた作業に本腰を入れることとなる。