▼視点
▽ニュース
▽国税庁等新幹部の横顔
▽税経相談室(税理士 森田 修)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ
 (中小企業診断士 落藤伸夫)
▽税理士が社長の経営参謀として活躍する方法
 (公認会計士・税理士 柴山政行)
▽世界の税金こぼれ話(税理士 川田 剛)
▽令和6年6月の企業倒産状況
▽令和6年度税制改正解説① 相続税関係
▽資料〜相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例
 (令和5年度税制改正関係)
▽ティータイム

改正・延長はあるのか「企業版ふるさと納税」

 ふるさと納税には、個人版のほか企業が行う「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」がある。近年、寄附の増加が顕著となっている一方で、先般、企業の還流疑惑が取り沙汰される中で、来年3月に適用期限を迎える同制度の改正・延長はあるのか。

 企業版ふるさと納税は、地方版総合戦略に位置付けられた事業について、自治体が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を企画・立案し、国から認定を受けた地方創生プロジェクトに企業が寄附をした場合、法人税、法人住民税、法人事業税の税額控除が受けられる、平成28年度税制改正で創設された制度。
 当初は、制度にメリットを感じる企業は少なく、導入初年度は寄附件数517件(寄附額7.5億円)、その後3年間も年間1,300件前後(30億円前後)と低調で推移した。
 政府は、制度の活用促進を図る一環として、自治体と企業とのマッチングイベントや、制度に係る大臣表彰などを実施。地方創生の更なる充実・強化に向け、地方への資金の流れを飛躍的に高める観点から、令和2年度税制改正において税額控除割合を2倍に引上げ、損金算入と合わせた税の軽減効果を最大約9割(企業負担1割)に見直し、適用期限を令和6年度末まで5年延長した。それらの結果、令和4年度には寄附件数が8,390件(341.1億円)まで増加している。なお、今年4月1日での認定計画を有する自治体は、46道府県及び1,598市町村の1,644団体。
 また制度は、単なる資金面での支援にとどまらず、寄附を通じた官民連携を推進する効果も期待されており、寄附を契機に企業との連携協定の締結や、寄附活用事業の企画立案段階から企業が参画するケースなど、企業のノウハウ・アイデアや人材を活用した新たな地方創生の取り組み支援も行われている。
 このような中、適用期限に向けた制度に対する動きが本格化してきた。政府は、6月21日公表の「骨太方針2024」に、これまでの取組状況等を総合的に検証し、今後の在り方を検討することを明記。7月には経済同友会が、「企業版ふるさと納税の活用促進に向けた提言」を公表し、税額控除の特例措置の延長(期間は少なくとも5年間もしくはそれ以上)又は恒久的な措置の検討や、税額控除が最大となる寄附額の上限を課税所得の約1%から5%程度へ引上げなどを提言している。
 また、今後の制度見直しの方向性としては、いかに企業が株主に対して寄附の意義等を説明し易すい制度設計を作っていくかがカギとなるとの指摘も多いようだ。
 一方で、制度の存続に水を差す出来事も。自治体が寄附を行う企業に対して、その代償として経済的な利益を供与することは禁止されているが、さきごろ制度を使って町に寄附した企業の子会社が、その寄附金を原資とした事業を実質的に受注するという「還流疑惑」が明らかになった。
 今月末には各省庁の令和7年度税制改正要望が提出される。どのような改正要望が出てくるのか、そして実際にどのような改正内容等となるのか注目される。