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依然多い厚年特例納付保険料の未納付

 被保険者から厚生年金保険料を源泉徴収していたにもかかわらず事業主が未納付等であった場合、厚生年金特例法により、時効消滅後でも納付すべき保険料(特例納付保険料)を任意で納付することができ、年金事務所がその納付を勧奨している。しかし、納付を行わない事業主は増加傾向にあり、納付する旨の申出のない累計1千件超の事業主の公表に至っている。

 平成19年12月に成立した厚生年金特例法(厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律)は、事業主が従業員から厚生年金保険料を天引き(源泉徴収)したにもかかわらず、保険料を納付しなかったり被保険者の資格関係等の届出も行っていないために年金記録がない事案について、年金給付を行うことを可能とする措置を講じたもの。地方年金記録訂正審議会での調査審議の結果等を受けて、年金の保険給付の対象とするための年金記録を訂正して年金給付を行うとともに、事業主に対しては時効(2年間)消滅後でも保険料の納付を勧奨し、追納を求めていく仕組みとなっている。
 厚生労働省は7月26日、「厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律の施行状況に関する報告」を閣議決定し、国会に提出した。厚生年金特例法において、地方年金記録訂正審議会の調査審議の結果や事業主の保険料の納付件数等について約半年に1回報告すると規定しているもので、第33回目となる今回は今年3月31日までに同審議会において年金記録の訂正の答申が行われた事案等についての報告が行われている。
 報告によると、令和5年10月1日から令和6年3月31日までに、事業主が保険料を納付する義務を履行しなかったため年金記録を訂正する必要があると認められた厚生年金保険関係の件数は2,619件で、特例納付保険料の総額は3億6,418万340円。件数の重複計上もあるが、2,528件に納付を勧奨し、2,327件が納付を申し出。実際に納付が行われたのは2,271件(保険料2億8,997万2,262円)だが、未納付は321件(同7,420万8,078円)もある。
 平成27年4月1日からの累計では、年金記録を訂正する必要があると認められたものは3万7,449件で、特例納付保険料の総額は42億3,712万4,406円。3万6,651件に特例納付保険料の納付勧奨を行い、3万2,762件が納付する旨を申し出。納付状況は、納付が行われたのは3万1,595件(保険料総額34億3,370万6,185円)、一方で未納付は4,359件(同8億341万8,221円)にものぼる。
 厚労省では、事業主等が特例納付保険料を納付しない場合にはその事業所名及び事業主等の氏名を公表しているが、平成27年4月1日からの累計で1,603件を公表。この中には下記事例で税理士事務所等も名を連ねている。「納入期限までに特例納付保険料を完納しなかった事業主」2事務所(4件)、「所在が不明のため、納付の勧奨ができず、国庫負担を実施」10事務所(12件)、「日本年金機構において度重なる納付の勧奨を実施し、かつ、公表を行ったが特例納付保険料の納付申出がなく、国庫負担を実施」15事務所・2法人(35件)。職員5人以上の士業事務所も社会保険の強制適用となっているが、税のみならず社会保険の未納付も気を付けなければならない。