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見直し期限迫る経営セーフティ共済の節税策

 近年、本来の趣旨とはずれた形で制度を利用して税制の優遇措置を適用する“いわゆる「行き過ぎた節税」”に関して、税制改正で封じる措置が行われている。令和6年度税制改正においても、「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」を利用した節税策を封じる見直しが行われており、その施行日(今年10月)まで1カ月を切った。

 経営セーフティ共済は、昭和53年4月に取引先事業者の倒産の影響を受けて中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐため創設された制度で、(独)中小企業基盤整備機構が中小企業倒産防止共済法に基づき運営している。
 事業を1年以上行っている企業(業種により資本金又は従業員数の要件あり)を加入対象に、万が一、取引先事業者が倒産して売掛金債権等が回収困難となった場合、その事業者との取引確認が済み次第、「回収困難となった売掛金債権の額」と「掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない額まで融資を「無担保・無保証人」で受けられる。また、取引先が倒産していなくても、事業資金が急に必要になった場合は1年以上納付で無担保・無保証人で一時貸付金の借り入れできる。
 掛金は、月額5,000円から20万円まで5,000円刻みで、加入後の増額・減額も可能。解約の際は、その理由により支給率が違ってくるものの、自己都合の任意解約でも掛金を12か月以上納付していれば掛金総額の8割以上の解約手当金を、40か月(3年4か月)以上となれば掛金全額が解約手当金として返金される。
 そして税制上の措置は、掛金を法人の場合は損金(個人事業主の場合は必要経費)として当期の利益を圧縮(節税)することができ、決算時に大きく利益が出る見通しであれば掛金を増額することで節税額も大きくすることができる。なお、掛金は解約時に課税対象となる解約手当金(雑収入)となることから、実質的には課税の繰延となる。
 メリットが多いことから今年3月末の同制度の在籍件数は61万7,136件(任意解約までの在籍期間平均約9.2年)に達しているが、近年、節税目的で短期間に脱退・再加入を繰り返すケースが増えており、同機構の調査により「在籍3年目、4年目の解約」が約33%、「解約2年未満で再加入」が再加入の約83%を占めるなど、掛金全額が戻るタイミングで解約をして再加入するケースが多く、また税制優遇措置があることが加入の決め手であるというケースも約3割を占めていることが判明した。
 加えて、同制度を利用した節税をうたうサイトや動画・書籍が多数あり、制度の趣旨とは違う利用が伺えることから、政府は令和6年度税制改正で、今年10月以降に共済契約を解除後に再び締結した場合には、その解約日から同日以後2年を経過するまで、支出する掛金の経費計上を認めない見直しを行った。
 税制改正後、同制度から脱退した企業もあり見直しの効果は出ている。しかし、連鎖を含め倒産はどの企業でも起こりうることから、制度加入はある意味「必要枠」。迫る見直し期限の中で顧問先に対して税理士等は、制度の内容、改正後も節税効果は残っていることなどを説明した上で、解約・継続を含めた経営のアドバイスが期待される。