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「フリーランス新法」施行

 この11月1日から、フリーランス新法の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行された。規模・業種に関わらず企業等(発注事業者)が対象となることから、おさらいも兼ねて制度確認が必要だ。

 働き方の多様化が進み、個人や一人会社などで業務委託を受ける事業者(フリーランス)が増加する中、発注事業者とフリーランスの取引において、“一方的に発注が取り消された”、“報酬が支払期日までに支払われない”等の取引トラブルも多くなっている。そこでフリーランスのうち、個人で従業員を使用しないもの及び法人で一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないものを「特定受託事業者」と位置付け、受託した業務に安定的に従事できる環境整備のため、業務委託する発注事業者に対して下請法と同様の規制を課すほか、限定的に労働者類似の保護やこれらの違反で行政指導を可能とするため、フリーランス新法が創設された。
 同法では、発注事業者の満たす要件(①従業員無し、②従業員有り、③従業員有りで、一定の期間以上業務委託有り)に応じて特定受託事業者への義務内容が異なるが、業務委託をする場合は「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「報酬の支払方法」などを書面等で明示しなければならない。また、上記②の場合は、発注した物品等を受け取った日から60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定してこれを守ることや、ハラスメント対策の体制整備などが追加される。そして従業員がいる発注事業者が特定受託事業者に対し1か月以上の業務委託をする際には、「受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、・不当な給付内容の変更・やり直し」の禁止、「育児介護等への配慮」「中途解除等の事前予告・理由開示」なども必要となる。
 トラブルが多い報酬関係では、できる限り現金(金融機関口座へ振り込む方法を含む)で支払うこととされ、現金以外の場合は支払方法が報酬を容易に現金化できるなど、特定受託事業者の利益が害されない方法としなければならない。金融機関口座へ振り込む場合も、特定受託事業者との合意がないにもかかわらず振込手数料を報酬額から差し引くことのほか、たとえ負担の合意があっても金融機関に支払う実費を超えた振込手数料を報酬額から差し引くことは、報酬の減額として同法上問題となる可能性がある。
 これらの違反が明らかになった場合は、中小企業庁長官(又は厚生労働大臣)からの指導・助言や、必要な措置を執ることを勧告され、これに従わない場合には命令とともに企業名が公表される。さらに命令に従わない場合は、罰金(50万円以下)が科されることになる。
 あらゆる業種・業態が発注事業者に該当することから、今後も特定受託事業者との業務委託を行う場合は対応が十分かどうかの再確認を、また現時点で業務委託がない場合でも最低限の内容は知っておく必要があろう。