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文書回答手続の利用のススメ
申告期限等前の具体的な取引等に係る税務上の取扱いに関する納税者からの照会に対して文書により回答するとともに、他の納税者の予測可能性の向上に役立てるため、一定のものはホームページ上にその照会及び回答の内容を公表する「文書回答手続」。国税庁は、e-Taxでの照会文書提出を可能としたり特設サイトも開設するなどあらためて利用勧奨を行っている。
国税に関する文書回答手続は、実際の取引や事実関係に対する税務上の取扱いがどうなるかについて納税者等から事前に照会があった場合、その回答を文書により行うとともに、同様の取引を行う他の納税者等にも予測可能性を与えることを目的としてその内容を公表する、平成13年9月に導入された制度。
導入時は基本的に汎用性の高い取引に対象を限定していたが、平成16年3月に対象範囲拡充の見直しを行い、特定の納税者の個別事情に係る取引等についても、手続の濫用防止等の観点から設けた一定の要件に該当しない限り対象とするとともに、同一の業種・業態に共通する一般的な照会について、一定の要件の下、同業者団体等からの照会に対し一般的な回答を行うという手続を別途定めている。
これらの見直しを経て現行の文書回答手続では、国税に係る申告期限前(源泉徴収等の場合は納期限前)の「具体的な取引等に係る税務上の取扱い」に係る照会が対象で、実際に行われた取引等のほか、将来行う予定の取引等に関する照会で個別具体的な資料の提出が可能なものが対象。ただし、照会の前提とする事実関係について選択肢があるものや、調査等及び徴収等の手続・酒類行政に関するもの、個々の財産の評価や取引等価額の算定・妥当性の判断に関するもの、実地確認や関係者への照会等による事実関係の認定を要するもの、などは対象外となる。
実際に事前照会を行うには、「取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会」の様式に必要事項を記入し、関係資料を添付して提出。納税地を所轄する税務署の担当部門が受付窓口だが、酒税や間接諸税(印紙税除く)に関しては製造場等がある所在地の所轄国税局又は税務署となる。記入後の同様式と関係資料をPDFファイルに変換し添付することでe-Taxによる提出も可能。文書回答になるかどうかは「文書回答手続特設サイト」で簡易チェックをすることもできる。
事前照会に対する回答は、審査に必要な追加資料の提出や照会文書の補正に要した期間を除き、窓口で受け付けた日から原則3か月以内に処理。原則2か月以内に照会及び回答の内容が国税庁ホームページで公表されるが、照会者からの申出により最長1年間延長できる。文書回答の対象とならない場合でも、口頭による回答が可能なものは回答が口頭で行われる。また、口頭回答した事例のうち他の納税者の参考となるものについても「質疑応答事例」としてホームページで掲載される。
令和5年度における事前照会の受付件数は157件で、過去5年間で最も多くなったがまだまだ利用は少ないといえる。これまで税務上の取扱いが明確になっていないものは文書回答手続を活用して、税務調査に伴う争訟リスクの低減や今後行う予定の取引等を安心して進められるようにしたい。