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令和5年度の租税特別措置の適用実態は

 2月4日、開会中の第217回国会に「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」が提出された。国税の法人税関係の特別措置の直近3年度分の適用件数・適用額がわかる同報告書から、特別措置等の適用状況を見てみると‥…。

 「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」は、平成22年度税制改正で租税特別措置の適用実態を把握するための調査及びその結果の国会への報告等の措置を定めることで、適用状況の透明化を図り、適切な見直しを推進し公平で透明性の高い税制の確立を目的とした「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(租特透明化法)」により実施されている。そのため、法人税関係特別措置のうち税額又は所得金額を減少させる租税特別措置を適用する場合は、法人税申告書に「適用額明細書」を添付する必要がある。
 今回提出された報告書は、令和6年3月末までの1年間に終了した事業年度等において、税額または所得を減少させる租税特別措置を適用した特別措置について、同年11月末日までに税務署へ提出された法人税申告書に添付する適用額明細書に記載された事項を集計している(連結法人は1グループを1法人で集計)。
 報告書をみると、適用額明細書の提出法人は148万3,298法人(4年度146万2,156法人)で、法人税関係の特別措置78項目(同81項目)について延べ241万8,094件(同234万8,819件)適用されている。また種類別では、法人税率の特例(措置数2)は108万418件で特例対象所得金額は4兆5,474億円、税額控除関係(同17)は31万3,951件で控除額は1兆7,338億円、特別償却関係(同26)は3万7,432件で特別償却限度額等は8,280億円、準備金等関係(同10)は3,639件で損金算入額は6,474億円。
 個別措置ごとにみると、令和6年度改正で中小企業向けの制度が強化された一方で、会計検査院から教育訓練費の上乗せ措置の見直しを求められた「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」は、適用件数25万4,483件・適用総額7,278億円(4年度21万5,294件・5,150億円)と増加している。
 7年度改正で見直し等が盛り込まれている措置では、所得金額が年10億円を超える事業年度について、所得金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率を15%から17%に引上げ適用期限を延長する「中小企業者等の法人税率の特例」は、108万279件・4兆5,281億円(同106万8,172件・4兆4,020億円)と群を抜いて利用されている。一方、地域経済牽引事業計画に従い建物・機械等の設備投資を行う場合に法人税等の特別償却又は税額控除が受けられる「地域未来投資促進税制」は特別償却が106件・158億円(同141件・253億円)、税額控除が198件・80億円(同222件・86億円)となり、ともに減少している。
 租税特別措置は、政策目的実現のために特定の条件を満たした個人・企業に税負担の軽減・加重を行う措置。制度の利用状況の精査や経済状況等を踏まえた上で、新設・廃止を積極的に行ってほしい。