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今後も拡がるかCBT方式試験の導入
法務省は、昨年6月に閣議決定した「骨太方針2024」及び「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で示された方針に基づき、令和8年司法試験からCBT方式の試験を導入する。パソコンにより答案を作成しそのデータを採点することで受験者・採点者の負担軽減等につながるCBT試験は、様々な国家資格試験で既に採用されており導入の裾野は拡がりをみせている。
昨年6月21日に閣議決定したデジタル社会の実現に向けた重点計画では、「司法試験及び司法試験予備試験については、受験者の利便性の向上、試験関係者の負担軽減等を図りつつ、適正な試験実施を実現するため、試験のデジタル化に向けた取組を進める」と明記。これらの政府方針の下、CBT(Computer Based Testing)方式による試験を、司法試験には短答式試験及び論文式試験のいずれにも、司法試験予備試験は論文式試験のみを対象に令和8年試験から導入する予定となっている。
導入の背景にあるのは、現行試験では手書きで大量の答案を作成しなければならないこと。論文式試験では1問当たり最大でA4サイズ用紙8枚にも及び受験者に過度の負担を強いるとともに、大学教授等の採点担当者は判読困難な答案も採点しなければならず、答案用紙の作成・運搬等に相応の労力やコストがかかっている状況。
そこでCBT試験を導入することで、受験者は全試験場に用意されるパソコンを使用して答案を作成し、その答案を電子データとして保管し採点することで、受験者及び採点担当者双方の負担軽減につながるとともに、答案用紙の作成・運搬等に係る経費の削減や情報セキュリティの向上が図られることとなる。
具体的に司法試験等のCBT試験はどのようなものなのか。法務省の司法試験委員会が用意する16インチ以上のモニターサイズでWindows 11 ProをOSとする等の基準を満たす同等のスペックを有するノートパソコン及びマウスを全試験場で使用。受験者は問題文・答案作成の2画面または問題文・試験用法文・答案作成の3画面で試験を行い、司法試験用法文は横書きで表示。タイピング等による文字入力に加えて、ショートカットキーを使用したコピー・貼付け・切取り等の機能や検索等のドキュメント編集に係る一部機能は使用できるようにするが、搭載する文字入力ソフトの予測変換機能は使用不可とする。試験の「残り時間」も答案画面の右上に表示する。
法務省は4月末に練習版・体験版の「司法試験等CBTシステム(体験版)」をはじめ、論文式・短答式の操作マニュアル等をホームページ上で提供。試験当日の開始前に操作性を確認できる画面も用意する予定。
このCBT方式の試験は司法試験等だけでなく、日商簿記、FP技能検定、企業経営アドバイザー、経理・財務スキル検定(FASS)など、現在多岐にわたる国家資格試験・検定等で行われている。全国に300ヶ所以上あるCBTテストセンターで試験を実施するため受験会場が多く試験日程等の幅が広いため、社会人などの受験者にとっては希望する会場・日時の選択肢が増えるメリットもある。令和6年の司法試験受験者数は約3,800人だが、これよりも多い士業等試験でCBT試験が導入されるか今後の動向が注目される。