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年金制度改正法案国会へ

 年金制度改正法案(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案)が5月16日、国会に上程された。同法案では、基礎年金を底上げする措置が外されたものの、令和7年度税制改正で見直された“103万円の壁”に続き、厚生年金加入のボーダーライン“106万円の壁”の見直しなどが盛り込まれている。

  現在国会で審議中の年金制度改正法案は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため、国民年金法や厚生年金保険法の一部改正等を一つにまとめたもの。当初3月提出とも言われていた改正法だが、核となる基礎年金(国民年金)を厚生年金の積立金を活用して底上げを図ることに自民党から懸念の声が上がり、国会上程が2か月近く遅れるとともにこの部分は法案から削除された。
 改正案をみると、メインとなる被用者保険の適用拡大では、まずいわゆる「年収106万円の壁」と言われる賃金要件が撤廃される。これは、会社員の配偶者などで一定の収入がない被扶養者(第三号被保険者)等がパートやアルバイトとして働き、その収入が一定額を超えると社会保険料負担が発生し手取り収入が減少する。この手取り収入が減らないように年収を抑える金額のボーダーライン。月額8万8千円とされるこの賃金要件を公布から3年以内に撤廃する。また従業員51人以上である企業規模要件を令和9年10月から段階的に緩和(令和17年10月撤廃)する。
 働きながら(厚生年金加入のまま)老齢厚生年金を受給している労働者の収入月額が支給停止調整額を上回ると厚生年金が減額され、働き損になると指摘されている「在職老齢年金」について、シニア世代の就労促進を図る観点等から、令和8年度より減額開始基準を月額50万円から62万円に引き上げる。これにより、人手不足の解消と健康寿命が伸びる中で労働意欲の阻害感の改善を図る。
 その他、標準報酬月額の上限の段階的引上げや、遺族厚生年金について現役世代で子どもがいない人が受け取る際の要件の男女差の解消も盛り込まれている。
 気になる成立については、6月22日が会期末であること等から成立の可能性は厳しいところだが、成立を待って適用が開始される法律もある。例えば、3月に成立した令和7年度税制改正では、第二号被保険者のiDeCoの拠出限度額について、勤務先の企業年金の有無等による差異を解消し、企業年金と共通の拠出限度額に一本化した上で共通拠出限度額を月額6.2万円に引上げ、第一号被保険者の個人型確定拠出年金と国民年金基金との共通拠出限度額の月額7.5万円への引上げなどに対応した税制措置が盛り込まれたが、適用時期は確定拠出年金法等の改正後とされている。
 一部報道では、野党の修正内容を受け入れた形で成立するとの情報があるものの、今夏には参議院選挙が控えている。いずれにしても会期末まで改正法審議から目が離せない。