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物価上昇による基礎控除引上げの方策とは
今年12月の年末調整から適用される所得税の基礎控除引上げについて、物価上昇等を踏まえた基礎控除等の額の適時引上げの具体的方策の検討が法律で明示的に求められたことを受け、政府税調での議論に向けた論点整理を行う「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」が5月29日に開催され、物価調整の実施頻度等の案が示された。
令和7年度税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応として所得税の基礎控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ等が行われ、改正法附則では、物価上昇等を踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げるという基本的方向性により具体的な方策を検討することが明記された。
基礎控除等の額が定額であることにより物価が上昇した場合に実質的な所得税の負担が増加するという課題への対応について、所得税の源泉徴収をする義務がある者の事務負担への影響も勘案しつつ適時に引き上げるため、政府税調が設置した「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」の第2回会合で議論の論点整理を開始。検討の素材として、事務局である財務省側が考えられる範囲だとして下記3案の物価調整の具体的方策を示した。
【例示1】毎年物価調整を実施
X年第3四半期における対前年比の物価上昇率を勘案して基礎控除等の額を決定する。
このケースでは、物価変動をタイムリーに反映することが可能だが、システム改修を含めた源泉徴収義務者の事務負担への影響に留意する必要が生じる。
【例示2】定期的に物価調整を実施
3年おきに第3四半期における対3年前の同期比の物価上昇率を勘案して基礎控除等の額を決定する。
このケースでは、物価変動のトレンドを反映するとともに、システム改修を含めた源泉徴収義務者の対応を毎年行う必要はない。また数年おきとすることで、システム改修時期の予測可能性を高めることができる。
【例示3】毎年点検し、一定の物価上昇率となった際に調整を実施
前回引上げ時の前年の第3四半期からの物価上昇率が5%を上回った際に、物価上昇率を勘案して基礎控除等の額を決定する。
このケースでは、物価変動を比較的タイムリーに反映しつつ、システム改修を含む源泉徴収義務者の対応は必ずしも毎年行う必要はない。ただし、毎年の点検結果によることとなるため、システム改修時期の予測可能性は低くなる。
一方、改正法案提出時期と適用時期については、例示1では、X+1年の通常国会に改正法案を提出し、X+2年分の所得税から適用(X+2年1月から新たな控除額に基づく源泉徴収を実施)することとしており、他2案も同様のイメージとなる。
当日の専門家会合では、人事労務・税務システムのベンダー2社から改正による源泉徴収義務者の事務負担をヒアリングしたほか、物価調整の指標について大学教授から説明が行われた。今後も引上げ頻度や用いる指標について検討を重ね、改正法附則に掲げられた「宿題」を全て議論していく考えだ。