国税庁がこのほどまとめた令和6事務年度における法人税・法人消費税および源泉所得税の調査事績によると、AIを活用した予測モデル等により調査必要度が高いと判定した法人に対する調査が大きな成果をあげたこと等により、追徴税額が前年より増加するなど、3税にかかる追徴税額が平成22事務年度以降で過去最高となったことがわかった。
 令和6年2月1日から令和7年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象に、令和6年7月から令和7年6月までの間に実施した令和6事務年度における法人税調査では、実地調査を前年より5千件減の5万4千件に実施。調査必要度の高い法人を優先して調査を実施していることから件数は減少している。1件当たりの平均調査日数は17.1日。
 実地調査の結果、申告に何らかの非違があった法人は4万2千件で前年より3千件減、申告漏れ所得金額は8,198億円で前年より1,543億円減とそれぞれ減少したものの、調査による追徴税額は加算税を含めて2,187億円(対前年比4.0%増)と増加。このうち不正計算があった1万3千件から不正所得金額2,980億円を把握し、不正発見割合は23.5%。
 法人税と同時に行う法人消費税の実地調査については5万3千件に実施し、非違があった3万2千件に1,220億円を追徴課税。このうち不正計算があった1万件に係る追徴税額は435億円、1件当たりでは415万円。
 これら法人税および消費税の実地調査に加え、申告内容に簡易な誤り等が想定される法人等に対して、書面や電話による連絡等により自発的な申告内容の見直しを要請する「簡易な接触」を8万5千件実施。申告漏れ所得金額は565億円、追徴税額は265億円となっている。
 一方、源泉所得税等の調査では、同事務年度における給与所得の源泉徴収義務者355万2千件のうち6万4千件に実地調査を行い、非違が認められた2万1千件に404億円を追徴課税。このうち重加算税を適用したのは4千件で、その税額は126億円。
 この結果、3税の追徴税額の総額は3,811億円で平成22事務年度以降での最高額となり、調査1件当たりの追徴税額も令和2事務年度(831万円)に次いで2番目に高い額(697万円)となった。
 国税当局では調査にあたり、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、予測モデルが判定した不正パターンに加え、申告書や国税組織が保有する様々な資料情報等を併せて分析・検討することで、調査官が調査実施の要否を最終的に判断している。このように調査官の知見にAIの分析結果を組み合わせることにより、効率的で精度の高い調査が行われている。