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見総務省の措置法等に係る政策評価の点検結果は
総務省は11月22日、令和6年度の「租税特別措置等に係る政策評価の点検結果」を公表した。各省庁の令和7年度税制改正要望に盛り込まれた制度についての点検の結果、来年3月に適用期限を迎える中小企業者等の法人税率の特例などに対して、延長等における分析・説明が不十分との通知を行っている。
租税特別措置等に係る政策評価は、税制改正作業に有用な情報を提供するとともに、国民への説明責任を果たすため、各行政機関自らが実施しており、政策評価の義務付け対象は、法人税(国税)、法人住民税・法人事業税(地方税)関係の措置のうち、税負担を軽減・繰延べするものとされている。
そして、総務省はその政策評価書において十分な分析・説明がなされているかという観点から点検を行い、各行政機関及び税制当局に結果を通知・提供している。ちなみに、点検の観点としては、「達成目標が具体的に設定されているか」「適用数の実績及び見込みが具体的に把握・予測されているか」「あらかじめ設定した達成目標の実現状況(効果)が具体的に把握・予測されているか」など8項目に関して行われる。また公表がこの時期であり、次年度税制改正議論の俎上にのぼる措置法等であることから、点検結果は毎年関心が高い。
今回の点検対象は、経済産業省10件、内閣府7件、厚生労働省6件など合わせて31件の令和7年度税制改正要望に係る政策評価書が対象とされた。点検の結果をみると、全体的には「過去の効果」や「将来の効果」を中心に、不十分なものが一定数みられる状況となっている。そして、その1つに経済産業省が2年間の適用期限延長を求める「中小企業者等の法人税率の特例」(第42条の3の2)も含まれている。
同制度は、平成21年度改正で創設された中小企業者等に係る法人税について、年800万円以下の所得金額の部分については法人税率が15%に軽減されるもので、直近の適用数(令和5年度)は105.1万件におよぶ。経産省では今後も同件数程度の適用があるとしている。
点検結果を項目別でみると、「達成目標」では、前回の延長の際にも指摘が行われた、延長後の達成すべき水準(目標値)が定量的に示されていないこと、「将来の効果」では、資金繰り改善の効果、設備投資や賃上げに繋がるとの説明が行われているが分析・説明が不十分であることなどから、5段階評価(A〜E)でD及びE評価となっている。
なお、同制度の延長等に関しては自民党及び政府の税制調査会でも議論されていて、11月19日の政府税調の専門家会合では、創設から既に15年間続いていることから、延長に対して否定的な意見や企業の成長を逆に阻害しているとの発言も見られた。その際、財務省からは制度上所得が大きい中小企業ほど減税を満額受けられることや中小企業の6割を占める赤字企業には減税効果が及ばないなどの説明が行われた。
同制度を含め租税特別措置法は時限的(当分の間)の措置とされていることや、税収にも大きく影響することなども考慮した上で、延長にあたっては特にしっかりとした裏付けが必要だろう。