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相続土地国庫帰属制度の現状と認知度

 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法(制度))が今年4月で施行2年を迎えるが、法務省によると施行後の申請件数は3千件、国への帰属件数は1千件を超えた程度と低調で、制度の認知度も依然として高くないことがわかった。

 相続土地国庫帰属制度は、土地を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)したものの、“すでに持ち家がある”、“相続等した土地が遠距離にある”、“相続した土地が売れない”など相続等を契機として土地を望まず取得した所有者の負担感が増加し、その結果、管理の不全化を招いていることから、一定の要件の下で国庫に帰属させることを可能とするため、令和5年4月27日に施行された。
 法務省によると、昨年12月31日現在の同制度の申請件数は3,199件。処理の状況は、「国に帰属されたもの」1,186件、必要な添付書類の提出がなかった等による「却下」51件、通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地である等による「不承認」46件、自治体等による土地の有効活用や隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった等による「申請の取下げ」500件となっている。施行後半年の状況(申請件数900件弱・帰属件数2件)から見れば増えてはいるものの、申請件数は思いのほか伸びていない。
 その理由としては、申請時の必要書類が多いこと、引き取り要件が幅広いなどハードルが高く相続人の手間が掛かるとともに、相続人だけでは判断が難しく、費用を掛けて弁護士や司法書士、家屋調査士等の専門家に手伝ってもらうケースもあり、二の足を踏む相続人もいるようだ。また申請の際に審査手数料が必要(一筆1万4千円)で、申請を取り下げた場合も手数料は返還されず、再申請の度に費用がかかる。帰属の際も10年分の土地管理費相当額の負担金が必要となるなど、金銭面の負担も軽くはない。
 法務省では、事前相談の体制強化として昨年10月15日より法務局等から遠方の地域にいる者でも相談が容易にできるようWebによる相談を開始するなど対応を図っている。
 なお、法律の附則には施行5年後に制度の検討が明記されているが、今後も対象となる土地は増え続けることを考えると、例えば申請時での専門家の関与の範囲を拡げやすくするなど現段階で見直せる部分を進めることは必要だろう。
 一方、制度の認知度の低さも利用低迷の大きな要因として挙げられる。法務省が昨年9月に実施した「相続登記の義務化等に関する認知度等の調査結果」では、相続土地国庫帰属制度を聞いたことがある者は3人に1人程度で、関心度合いも「関心がある」40.7%に対し「関心がない」が40.1%で、認知不足は否めない。また年代別の関心度も20、30代では50%近くに達しているのに対し、相続のタイミングとなるだろう40、50代は40%にも満たないことも明らかになっており、この年代に関心を持ってもらうよう制度の利用促進に向けた効果のある周知方法の検討も必要だ。