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フリーランス新法施行後初の是正・指導

 昨年11月から施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。以下、「フリーランス新法」。)が半年経過した。公正取引委員会では同法が適正に実施されているかどうかの情報収集等を行っていたが、施行後初となる是正・指導状況が公表され、調査した6割近くが違反行為を行っていた。

 近年のフリーランス増加に伴い、安心してフリーランスが働ける環境整備のため企業などの発注事業者との取引の適正化及びフリーランスの就業環境の整備を図ることを目的として創設されたのがフリーランス新法。同法では、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられている。そして、同法の取引の適正化に係る規定については主に公正取引委員会及び中小企業庁が、就業環境の整備に係る規定については主に厚生労働省がそれぞれ執行を担っており、公正取引委員会は同法に違反する疑いのある行為を行っている事業者やその業種に関する情報収集を積極的に行っている。
 また公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省は共同で、違反行為を受けたフリーランスからの申出を受け付けるオンライン窓口を設置しているほか、第二東京弁護士会では「フリーランス・トラブル110番」を設けて契約やトラブルの相談を受け付けており、今年3月末までの1年間に寄せられた相談件数は1万2,323件に達している。
 このような中、公正取引委員会では、フリーランスとの取引が多い「ゲームソフトウェア業」「アニメーション制作業」「リラクゼーション業」「フィットネスクラブ」の4業種を集中的に調査(調査件数77社)し、その58.4%(45社)から契約書面に報酬額や支払期日を明記しないなどの違反が把握された。業種別では、アニメーション制作業18社、ゲームソフトウェア業13社、フィットネスクラブ業12社、リラクゼーション業2社。違反内容は「取引条件の明示」39社、「期日内の報酬支払い」21社で、うち15社は両方で違反が把握されている。
 具体的な指導の対象となった事例をみると、ゲームソフトに関する企画制作を特定受託事業者に委託しているゲームソフトウェア業甲社は、業務委託をした場合に直ちに明示が必要な事項のうち報酬の支払期日を明示していなかった。また、整体施術の業務を特定受託事業者に委託しているリラクゼーション業乙社は、業務委託をした場合に直ちに明示が必要な事項のうち、役務の提供を受ける期日および場所を明示していなかった。グループレッスン業務を特定受託事業者に委託しているフィットネスクラブを営む丙社は、業務委託開始後に取引条件の明示を行っており、業務委託をした場合の明示を直ちに行っていなかった。
 公正取引委員会では、今後も情報を整理して調査を行い是正していくことにしており、企業の中でも今後フリーランス等と取引するケースが増えてくることも考えられる中小企業等においては、同法を改めて理解して遵守する必要がある。