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新しい資本主義2025改訂版案での税制指摘

 今 6月6日に総理大臣官邸で開かれた第35回新しい資本主義実現会議で「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版案」が取りまとめられ、13日に閣議決定された。この中で、給与所得者への食事補助やマイカー通勤手当の所得税非課税限度の速やかな見直しを行うことが挙げられており、来年度税制改正に盛り込まれる可能性が高くなった。

 今回まとめられた2025年改訂版をみると、2029年度までの5年間で実質賃金年1%程度の上昇を賃上げの新たな水準の社会通念『ノルム』として定着させ、雇用の7割を占める中小企業等について、「賃金向上推進5か年計画」に基づき5年間で60兆円の生産性向上投資を官民で実現するため、官公需も含めた価格転嫁・取引適正化、中小企業・小規模事業者の生産性向上、事業承継・M&A等の中小企業・小規模事業者の経営基盤の強化に取り組むとともに、地域で活躍する人材の育成と処遇改善を進める。その他、2022年策定の「スタートアップ育成5か年計画」の強化なども盛り込まれた。
 そして、「新しい資本主義実現に向けた取組の確実な推進」として、経済が物価上昇に転じた中で、政府の予算や制度もまた物価上昇に的確に対応できるよう変わる必要があり、政府自身が物価上昇を上回る賃金上昇の実現に向けて率先垂範すべく、省庁横断で総合的に予算・税制に係る公的制度の基準額や閾値の点検と見直しに取り組むとしている。その中でも、長い間見直されていない制度の速やかな見直しとして、税制関係では所得税非課税限度額2項目が指摘されている。
 1つ目が、企業が社員等へ支出する食事補助。企業等の支給する食事補助額が、①役員や使用人が食事金額の半分以上を負担、②使用者が支給した食事金額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が非課税限度額(月額3,500円)以下、をクリアしていれば給与として課税されない。近年、中小企業等による社員への食事補助の充実が図られる一方、食事支給に係る所得税の非課税限度額は、1984年の見直し以降、食料品価格が上昇する中で40年以上据え置かれていることから対象とされた。
 2つ目が、マイカー通勤に係る通勤手当。給与所得者に対して通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税となっている。電車・バスなどの交通機関の利用の場合は、2016年度税制改正で月額10万円から15万円に引き上げられている一方、マイカー通勤の非課税限度額は、片道の通勤距離が2km以上から距離により月額4,200円~31,600円とされている現行制度になった2014年度税制改正以降、10年以上据え置かれている。この間、ガソリン価格の値上げや自動車の関連維持費の上昇等が顕著であることから見直しを求めた格好だ。
 中小企業や小規模事業者においては、ここ数度にわたる改正賃上げ税制を毎回適用できる企業等は多くない。賃金上昇ではなくても社員等からも目に見える待遇改善である非課税限度額の見直しは企業にとっても持ち出しではなく、事務負担も少ない。来年度税制改正の議論の俎上に載る可能性は高く、両項目とも見直しされる公算が強い。