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今年度も多い税理士等の懲戒処分

 国税庁はこのほどホームページ内掲載の「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等」を更新し、令和7年度は6月17日現在で税理士業務の禁止及び停止、税理士法人解散の処分を21件に行っていることがわかった。新年度となり3か月が経過したがすでに令和3年度と同じ懲戒処分件数となり、令和に入り最も多かった昨年度の64件を上回る勢いとなっている。

 令和7年6月17日現在で更新された税理士及び税理士法人に対する懲戒処分等によると、税理士20人及び税理士法人1法人の計21件が処分を受けている。処分の内訳は、税理士業務の停止処分が15件、税理士業務の禁止処分が5件、税理士法人には税理士法第48条の20第1項の規定に基づき解散を命じた。停止処分は短いもので4か月だが1年超は5件あり、長いもので2年が2件あった。

 処分となった行為(1件で複数行為あり)の内訳は、「故意または過失による不真正税務書類の作成」が8件で、税理士としての職業倫理に著しく反する「信用失墜行為」が13件、「非税理士に対する名義貸し」が4件、「帳簿作成義務違反」が6件。

 業務禁止処分を受けた5件は、2件が信用失墜行為(自己脱税)、3件が故意による不真正税務書類の作成。信用失墜行為では架空の業務委託費を計上したり株式譲渡所得を除外して自己脱税を図り、故意による不真正税務書類の作成では概要下記の行為があった。

● 関与先の会社の法人税確定申告に当たり、同社代表者からの依頼により、過去の決算において粉飾経理で計上していた売掛金及び棚卸資産の残高をなくすために、売上及び棚卸資産の金額を減額して不正に所得金額を圧縮した申告書を作成。
● 関与先の所得税確定申告に当たり、正当な売上金額を認識していたにもかかわらず、関与先からの依頼により売上金額を減額することで不正に所得金額を圧縮した申告書を作成するとともに、税務調査の際に、その不正を認識するも調査担当者に真実を述べず不真正申告書の修正を行わなかった。
● 関与先の会社における消費税等確定申告について、不正に課税売上高を5,000万円超とする修正申告書の作成と、自己の判断により、新型コロナによる影響がなかったことを認識していたが事実とは異なる影響を理由として、本来、課税期間の開始前に提出すべき消費税簡易課税制度選択不適用届出書を課税期間の開始後に提出した。

 税理士としての職業倫理に著しく反する信用失墜行為については、自己脱税が業務禁止処分2件を含む4件あったほか、多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れが6件、業務け怠が2件、調査妨害が1件。このうち調査妨害行為では、関与先会社の税務調査において、調査担当者に関与先の事務所内への立入り等をさせなかったり、調査担当者に対する虚偽の申立てにより面接予約を取り消して関与先代表者に税務調査が行われていることを伝えないなど、調査を妨害したり進行を遅らせたことで、6か月の業務停止処分を受けている。

 税理士等でない者が作成した申告書に署名押印する「名義貸し」行為も依然として多く、今後も信頼される身近なパートナーとして税理士の更なる資質向上が望まれる。