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国税庁における令和7事務年度の取組み

 財務省はこのほど、7月から始まった令和7事務年度に国税庁が達成すべき目標等を設定した「実績評価実施計画」をまとめた。日本版記入済み申告書(書かない確定申告)の実現を見据えたオンラインによる税務手続の推進や、AIなどデジタル及びデータ活用による調査・徴収の効率化・高度化に向け、目標値設定や取組方針が示されている。

 令和7事務年度実施計画では、例年同様に「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収、酒類業の健全な発達の促進、税理士業務の適正な運営の確保」の3項目を大きな柱に、税務行政の適正な執行や税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、適正な調査・徴収等の実施及び納税者の権利救済など実績目標を設定し、各施策や業務に基づく具体的な業績目標を設け達成度合を評価していく。
 業績目標では、「オンラインによる税務手続の推進」としてe-Taxの利用状況の目標値を設定。主なものでは、所得税申告が78%(前事務年度目標値75%)、いわゆるALL e-Taxである法人税の添付書類を含めた申告が70%(同66%)、消費税(個人)申告が78%(同76%)とそれぞれ数%引き上げているが、相続税申告は63%(同48%)と実績値を踏まえて大幅に上昇させている。将来的には、確定申告に必要なデータを自動で取り込み数回の操作で申告が完了する「書かない確定申告」の仕組みの実現を目指すが、当面はマイナポータル連携の普及に努めることとする。
 また、スマホでも可能な電子納税証明書の交付請求は54%(同38%)、確定申告書等作成コーナーを利用した自宅等からのe-Tax申告は64%(同57%)と設定。普段は税になじみのない者でも、日常使い慣れているスマホや自宅等のパソコンから簡単・便利に手続を行える環境を構築するなど、これまで以上に“納税者目線”を大切にした各種施策を講じて、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」の実現を目指す。
 キャッシュレス納付は50%(同42%)に設定し、決済手段の多様化やキャッシュレス化が進展する中で国税の納付についても納税者利便を向上させる観点から、さらなるキャッシュレス納付の利用勧奨を行っていく。
 内部事務関連では、書面中心からデータ中心の事務処理への移行を進めており、個々の税務署で行っていた申告書の入力作業等を専担部署の業務センターで集約処理する「内部事務のセンター化」を令和8事務年度に全税務署を対象に実施するが、効率化された事務量を生かして調査・徴収事務の充実・高度化を図るための組織内のインフラ整備に取組む。
 このような業務のデジタル化に加えて、課税・徴収等の税務執行の効率化・高度化を図るため、データを活用した取組みも推進する。課税では、国税組織内・外の多様かつ膨大な情報の中から必要なデータを抽出・加工・分析等することで、申告漏れリスクの高い納税者の特定や滞納者への効率的な接触を図る。徴収では、過去の接触事績や納付状況等のデータ及びAIを活用して構築したモデルにより、各滞納者に最適なアプローチを予測し効果的かつ効率的な滞納整理を行う考えだ。
 7月からの1年間に何がどう進展していくのか我々も評価していきたい。