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来年施行の取適法で中小企業の取引が改善 !?
「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が今年5月に成立・公布され、改正下請法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法)となり、来年1月1日から施行される。これにより中小企業をはじめとする受注側の取引適正化と適切な価格転嫁は定着するだろうか。
下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的に昭和31年(1956年)に制定された「下請代金支払遅延等防止法」では、製造・修理・情報成果物作成・役務提供の委託に関して、親事業者に発注書作成・交付・保存、支払期日の決定等を義務付けるとともに、受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたき等を禁止行為とした。
政府一体となり価格転嫁対策に取り組んできた結果、価格交渉や価格転嫁の動きにも進捗が見られる。しかし、「物価上昇を上回る賃上げ」を実現すべく中小企業等が賃上げの原資を確保するためには、適切な価格転嫁を我が国の新たな商慣習としてサプライチェーン全体で定着させていくことが重要との観点から下請法改正の検討を進め、主要な改正から約20年ぶりに改正が行われ、取適法及び受託中小企業振興法として令和8年1月1日(一部規定は同法の公布日)から施行される。
取適法ではまず、「下請」という用語を、発注者と受注者が対等な関係でないという語感を与えるとともに、近年では発注者側の大企業の多くが外注先を下請と呼称していないため、法律名も含めて、下請事業者を「中小受託事業者」、親事業者を「委託事業者」、下請代金を「製造委託等代金」等に改正。
そして、コストが上昇している中で、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにも係わらず、委託事業者が協議に応じなかったり必要な説明を行わないなど、一方的に代金を決定して、利益を不当に害する行為を禁止する規定を新設。対価は引き下げられていなくても、コスト上昇に見合う転嫁が行われていないと中小受託事業者の利益が減少することから、コスト上昇型として交渉プロセスに着目した規定を新たに設けた。
また、支払手段として手形等を用いることで発注者が受注者に資金繰りに係る負担を求める商慣習が続いていることに鑑みて、中小受託事業者の保護のために手形払を認めず、電子記録債権やファクタリングも支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは認めないこととする。この他、従業員基準及び運送委託の対象取引への追加、報復措置の禁止の申告先を追加する面的執行の強化も図る。
帝国データバンクが今年6月に実施した同法に関する企業の意識調査結果によると、認知度は大企業及び中堅企業で8割を超えるが、中小企業は54.3%と5割にとどまる。ただし法改正の影響については、発注者側はマイナスが上回るが受注者側はプラスが上回っており、手形取引の減少や価格転嫁の行動指針発出を受けて資金繰りの安定や収益の安定化が図られ、一方的な価格の決定や据置きなど不公正な慣行の是正に寄与すると受注者の半数以上が期待を寄せる。長く続く価格転嫁を阻害し受注者に負担を押しつける商慣習が取適法で一掃されることが望まれる。