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通勤手当の非課税限度額の見直し
7年度税制改正大綱や6月の「骨太方針2025」等でマイカー通勤の非課税限度額見直しが明記されたのに続き、8月の令和7年人事院勧告・報告で自動車等の交通用具使用者への通勤手当の引上げが行われる。これを受ける形で、国税庁はさきごろ「通勤手当の非課税限度額の改正について」を公表したことから、マイカー通勤手当の非課税限度額の見直しがまもなく行われそうだ。
役員や使用人などの給与所得者に対して、通常の給与に加算して支給する通勤手当(通勤交通費)は、一定の限度額まで非課税となっている。
非課税枠は交通手段により、電車やバスなどの交通機関だけの利用者と交通機関のほかにマイカーや自転車なども使用している場合の通勤手当の非課税限度額は一定要件の下、1か月上限15万円とされている。一方、マイカー・自転車などによる通勤の場合は1か月当たり片道の通勤距離に応じて、「2㎞未満」全額課税から「55㎞以上」31,600円まで8区分に分けられている。そして、通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合には、有料道路の利用料金等も非課税の通勤手当に含まれる。
人事院勧告での通勤手当見直しは、民間企業の支給状況の調査等によるもの。具体的には、①自動車等使用者について65㎞以上から100㎞以上までの区分の新設、②現行の「60㎞以上」までの距離区分も民間の支給状況等を踏まえ引上げ、③駐車場等の利用に対する通勤手当の新設の3つで、このうち②に関しては今年4月から遡って実施される(①、③は来年4月から)。
また、今回の見直しは、物価高、中でも様々な商品等に影響を与えるガソリン価格の高騰もインパクトを与えている。実際に総務省統計局のデータをみると、例えば東京都のレギュラーガソリン価格(1L)は10年前の8月は137円だったが、今年8月には177円と40円も上昇しており、マイカー通勤者の負担増が指摘されている。このような事から、通勤手当の非課税限度額についても、昨年末に公表された令和7年度税制改正大綱のほか、今年6月に閣議決定された「骨太方針2025」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」で、経済が物価上昇に転じた中で、政府の予算や制度も物価上昇に的確に対応できるよう総合的に予算・税制に係る公的制度の基準額や閾値の点検と見直しに取り組むこととされ、長きにわたり見直されていないことから速やかに見直すべき制度に「マイカー通勤手当の所得税非課税限度額」が挙げられた。実際、平成28年の非課税限度額見直しでは、限度額が引上げられたものの、“自動車や自転車などの交通用具のみで通勤する場合は対象外”だった。
国税庁では人事院勧告での見直し公表後、今後、通勤手当に係る所得税の非課税限度額の改正が行われる場合には年末調整での対応が必要となることがあることをホームページに掲載しており、年内に見直される(適用開始)の可能性も高い。
企業の経理担当者等は年末調整等の実務に関して負担が増えることも頭に入れながら、今後の改正等の状況、情報に注意して適切な税務処理を行いたい。