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今年10月から変わるふるさと納税

 このほど、10月から1年間ふるさと納税制度を実施できる自治体の指定が総務省告示で明らかになった。今年も指定自治体の取消しや復帰などの動きがあったほか、近年加熱していた仲介サイトのポイント付与の禁止の制度改正も行われている。改めて内容等を確認していく。

 ふるさと納税制度では、対象団体の指定を原則として1年単位(指定対象期間:10月から翌年9月)としており、ふるさと納税制度の参加希望の自治体はその年の4月から8月末までに総務省へ申請を行い、申請内容等が制度の指定基準に沿って支障がないと認められた自治体が指定される。一方、各指定基準に適合しなくなった又は適合していなかったと認める場合、基準違反が地方団体に帰責しない要因によるものや基準違反により受領した寄附金額が僅少であることなど特段の事情がない限り指定が取り消され、取消日から2年間指定を受けることができない。
 9月26日公表された10月からの指定状況は、申請しない東京都を除く46道府県、市区町村は、現在指定取消しとなっている長野県須坂市・岡山県吉備中央町を除く1,739市区町村が申請して1,735市区町村が指定され、これまで指定されていた「長崎県雲仙市」及び「佐賀県みやき町」、「熊本県山都町」が募集費用総額5割以下基準違反で、「岡山県総社市」が返礼品割合3割以下基準違反により9月末で指定が取り消された。指定取消し自治体は制度開始以来9自治体となる。
 一方、返礼品の温泉利用券の調達費関係で基準違反となり令和4年5月に指定取消しとなった兵庫県洲本市が復帰した。
 基準違反については、意図的なケース以外でも、各指定基準の上限いっぱいで対応しているため、予期せぬ状況で基準を外れることもある。今回も総社市の場合、返礼品の米を公社から調達して寄附額6万円の返礼品(コメ1俵・1.8万円相当)を贈っていたが、価格高騰で公社の調達費用が1俵あたり約2.8万円に上昇。市は、公社へ調達費用値上がり部分の補填をしていたが、総務省は実質的な調達費用は補填を含む約2.8万円と認定し、寄附額の3割以下基準に違反したと判断した。
 そして、今回の大きな見直しとなったのが、寄附者にポイントを付与するポータルサイトを通じた自治体の寄附募集の禁止だ。
 村上総務大臣は9月30日の会見で、「ポイント付与で寄附者を誘引すること、またポータルサイト等が利用され、その付与率に係る競争が過熱化・激化することが、ふるさと納税の趣旨に則った適正なものとはいえない」と禁止理由を説明するとともに、自治体等に理解を求めた。実際、令和6年度のふるさと納税寄附総額1兆2,728億円のうちの5,901億円が募集費用で、仲介サイトへの手数料はこのうち1,656億円を占めている。なお、仲介サイトを運営する楽天グループは、これを不服とし国を相手に訴訟を起こしている。
 今回の見直しにより、これまで高止まりしていた寄附金に占める経費割合の減少も期待されているが、少しでも多くの寄附金が寄附先地域で有効に活用されることを願いたい。