▼視点
▽ニュース
▽税経相談室(税理士 小畑孝雄・森田 修)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ
 (中小企業診断士 落藤伸夫)
▽会社役員の令和7年分所得税等の確定申告
 (國學院大學特任教授 日野雅彦)
▽税理士が社長の経営参謀として活躍する方法
 (公認会計士・税理士 柴山政行)
▽裁決事例
▽労務相談コーナー
▽疲れが取れる睡眠マネジメント
 (整理収納アドバイザー 石牟礼ともよ)
▽インタビュー(藤本俊夫伊丹税務署長)
▽ティータイム

不動産小口化商品の贈与にメス!?

 政府税制調査会は11月13日に「第4回 経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」を開催。この会合で国税庁は、財産評価通達6項が適用されない一棟所有の賃貸用マンションなど貸付用不動産を利用した租税回避等を取り上げ、市場価格と通達評価額のかい離が大きい事案が散見する“不動産小口化商品”の贈与について問題提起を行った。

 相続税の節税と称して色々な相続税対策が喧伝され、不動産や株式などの評価額を圧縮する租税回避等が広く利用されているが、近年ではスキームの態様が多様化。評価通達6項に基づく課税処分で個別対応を行うとともに、令和4年最高裁判決等を契機にマンション通達を発出して分譲マンション等の区分所有不動産の評価の適正化を図ったものの、同通達が適用されない貸付用不動産を利用したスキームが依然として多く見受けられる。
 このスキームには、相続開始直前に一棟賃貸マンションを駆け込みで取得したり、不動産小口化商品の贈与により相続税対策を行った事例がある。
 マンション通達が適用されない一棟賃貸マンションに係る事例では、相続開始の約2年8か月前に主宰法人から22億円を借り入れて不動産会社から21億円で購入した被相続人(享年80歳)の一棟賃貸マンションを相続した相続人らは、そのマンションを評価通達に基づき4.2億円と評価し、借入金残高22億円を債務控除して相続税額を4.4億円で申告。取得価額と通達評価額には16.8億円のかい離があり、相続税額は7.9億円の減額となる。
 不動産小口化商品は、不動産特定共同事業法に基づき販売される不動産等の資産を小口化して複数の投資家で分け合い、その賃料収入や売却益を分配する仕組みの金融商品。
 不動産小口化商品に係る事例では、販売会社から不動産小口化商品(信託受益権)を3,000万円で購入して信託受益権を贈与。受贈者は評価通達に基づき480万円と評価して贈与税額を1,146万円減額するとともに、信託受益権を同じ販売会社に売却し取得価額とほぼ同額で現金化している。同様の事例では、評価額は82.8%の減少、税負担は95.7%もの軽減となっている。
 市場価格と通達評価額のかい離は、不動産小口化商品の贈与で5倍超の事例が散見されるため、今後メスが入る可能性が高い。