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今後の事業承継税制と後継者育成
中小企業庁が今年6月に設置した「中小企業の親族内承継に関する検討会」は12月12日、事業承継税制や後継者育成の今後の検討の方向性を示す「中間とりまとめ」を公表した。事業承継税制の特例措置の適用期限が到来することを契機に、より使いやすい税制への改正を望む声もある中、後継者の人材育成を含め今後どのように具体的な検討が進められていくのか。
同検討会では、中小企業における事業承継の重要な選択肢の親族内承継に着目し、円滑な親族内承継の実現に向けて、中小企業経営者に関する現状を確認しつつ企業の成長や発展も念頭においた、今後の事業承継税制のあり方と後継者育成に関する検討の方向性を論点ごとにとりまとめた「中間報告」を公表。従業員への継承やM&Aの割合が足下では高まっているものの、親族内の継承も全体の約3割を占め依然としてニーズは高く、この親族内での事業承継を進めるにあたり、活用が想定される事業承継税制と後継者育成を両輪で進めていく必要があるとして今年6月の設置以降、議論を進めてきた。
このうち事業承継税制については、活用した企業において事業承継の促進に繋がり、賃上げや企業の財政状況の改善などの望ましい効果が生じている。その一方で、適用要件の煩雑さから年間約1.2万社ほど存在すると推計される潜在利用層にとっての選択肢になりにくい可能性があることや、将来の不確実性を憂慮する経営者層からは納税猶予期間が長期にわたる点に対する懸念もあること等から、特例措置の適用期限到来を契機により使いやすい税制への改正を望む声もある。
そこで同検討会では、猶予対象株式数、猶予割合、猶予措置のあり方、雇用確保要件などの各論点について今後の検討の具体的な方向性を示している。
まず猶予対象株式数については、中小企業においては、所有と経営の一致により迅速な意思決定に基づく機動的な企業経営が競争上の強みになっている面もあるとの観点から、全ての株式を後継者に承継させることが望ましいと考えられる一方、会社法では議決権の2/3を保有していれば重要事項に関する特別決議を行えること等の観点を踏まえ、それぞれの中小企業の置かれている状況に応じた株式の承継のあり方を検討できるようにすることが適切で、制度の中で2/3と上限を設けることは必ずしも妥当ではないと唱える。
贈与と相続に差がある猶予割合については、贈与によって株式の承継がなされるよう促進することに制度上の主眼を置きつつ、相続の場合の猶予割合についても適切に検討することが重要と指摘。猶予措置のあり方については、実効性のある課税逃れ防止措置や上限設定等の制度運営に係る適切な措置も検討しつつ、評価減制度の可能性追求や一定期間の事業継続による免除措置等の工夫を求めた。
また雇用確保要件のあり方については、従業員の賃上げや、デジタル化・省力化も含めた企業としての成長に向けた取組を評価する観点等も考慮の上で検討すべきとしている。
今後、これら検討の方向性に基づき制度面での具体化を図っていくが、中小企業経営者にとって活用しやすい税制にリニューアルされるのか、今後も議論が注目される。