国税不服審判所は、令和6年4月から6月分の裁決事例について、先例性のある6事例をホームページ上の「公表裁決事例要旨」等に追加・公表した。
このうち消費税法関係の事例では、金地金が消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するとした事例があり、金地金の売買が事業目的から離れたところで行われたものといえず、金地金を取得した時点においてこれを売却する方針を有していたことから棚卸資産に該当するとして審査請求人の請求を棄却している。
本件は、請求人が消費税の課税事業者から免税事業者となる課税期間の初日の前日に取得した金地金の取得価額に係る消費税額をその前日の属する課税期間の控除対象仕入税額に含めて消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁がその金地金は消費税法上の棚卸資産に該当するため控除対象仕入税額に含めることができないとして消費税等の更正処分等をしたため、金地金が棚卸資産に該当しないとして原処分の取消しを求めた事案。
請求人は、金地金の売買を反復継続して行うものではないため、金地金の売買が請求人の営業に当たることはなく、消費税を納める義務が免除されることとなった課税期間の初日の前日において保有していた金地金(本件金地金)は「棚卸資産」に該当しない旨主張。
しかし、「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当。請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、事業目的から離れたところで行われているものとはいえないため、本件金地金は、請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならない。また、請求人は、本件金地金を取得した時点で、これを売却する方針を有していたと認められるため、請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められ、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当すると判断した。