会計検査院はさきごろ、会計検査院法に基づき「租税特別措置(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(賃上げ促進税制)における教育訓練費に係る上乗せ税額控除の適用状況、検証状況等について」を国会及び内閣へ報告した。法人が負担した教育訓練費増加額を上回る税負担の軽減を受けているとして、経済産業省や財務省に対し制度自体の検証と見直しを進めるよう求めている。
 同院は、教育訓練費に係る上乗せ税額控除は、適用要件となっている事項(教育訓練費増加割合が一定以上)と税額控除額の計算基礎となる事項(給与等支給増加額の一定割合)を基準とした異なる仕組みとなっており、税額控除額が教育訓練費に係る上乗せ税額控除適用法人が負担した教育訓練費増加額を上回る状況が生ずることも想定される等から、教育訓練費の上乗せ措置が始まった平成30事業年度から令和3事業年度の控除額を検証。
 その結果、賃上げ税制全体の適用法人数は延べ33万4,716法人(税額控除額6,211億4,495万円)、教育訓練費に係る上乗せ税額控除適用法人数は延べ1万2,861法人(同313億3,881万円)で、この上乗せ措置分について検査した結果、76.2%の延べ9,812法人に、教育訓練費増加額を上回る税負担を軽減していた(超過額214億円)。また、経済産業省等が税制改正要望に当たり参考にしていた研究を参考に、延べ9,970法人の教育訓練費が増加した場合の給与等支給増加額を算出し、その増加額に対応する教育訓練費の上乗せ税額控除額を試算。その結果、実際の上乗せ税額控除額の合計額は、試算の合計額と157億円の開差があった。
 同院は「政策目的である給与等の増加を促すために税負担の軽減を行う措置として、適切なものとなっていない恐れがある」と指摘等して、「経済産業省等及び財務省において、その効果及び要望措置の妥当性を検証して、その当該検証結果を基に経済産業省等において見直しを検討することが重要」との所見を述べている。