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急増している税理士の懲戒処分

 6月28日付官報で公告された税理士に対する懲戒処分によると、税理士法違反行為で38名の税理士が懲戒処分を受けている。6月時点ですでに令和5年度1年間の処分件数と同数となるほど急増しており、税理士業務の禁止処分も5名に行われている。懲戒処分の中には所属税理士の不正行為による事案も複数あるため、使用者責任としての注意も必要となる。

  国税庁は、税理士法に抵触する税理士及び税理士法人に対して税理士専門官を中心に調査を実施し懲戒処分等を行っているが、令和6年度においては6月28日付官報で税理士等懲戒処分が違反行為者38件が公告された。
 処分の内訳は、税理士業務の禁止が5件、税理士業務の停止が33件。停止期間が1年を超えるものは11件で、うち2年以上は2件。令和に入ってからの処分件数の推移をみると、令和元年43件(禁止14件・停止29件)、2年22件(禁止4件・停止18件)、3年21件(禁止5件・停止16件)、4年13件(禁止4件・停止9件)、5年38件(禁止5件・停止33件)であることから、今年度がいかに急増しているかがわかる。
 処分の内容となった行為の内訳(単独での複数処分含む)は、多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れや源泉所得税の未納など「信用失墜行為」が最多の23件で、次いで「帳簿作成義務違反」13件、「故意による不真正税務書類の作成」11件と多い。この他、「非税理士に対する名義貸し」5件、「過失による不真正税務書類の作成」3件。懲戒処分による業務停止期間中に複数社の確定申告書を作成していた「業務停止処分違反」と、業務停止となっていた税理士から依頼を受け確定申告書に署名する「名義貸し」行為を行った「税理士業務を停止されている税理士への名義貸し」がそれぞれ1件あった。
 懲戒処分となった違反行為では、未完成の工事に係る労務費を完成工事原価に振り替えて不正に所得金額を圧縮した法人税の申告書作成や、前代表者である被相続人が会社への貸付債権を債権放棄したとする虚偽の確認書を相続開始後に作成し、相続財産から除外することで相続税の課税価格を圧縮した申告書の作成など、関与先からの依頼により真正の事実に反した申告書を作成するケースが多い。
 また、関与先会社の給与の支払いに係る源泉徴収に当たり、税理士法人の使用人が、会社代表者からの依頼に応じて従たる給与である源泉所得税の税額計算を源泉徴収税額表の甲欄で計算し不正に圧縮していたが、使用人が源泉徴収簿等の確認を行わずに不正を見過ごすなど、相当の注意を怠った結果、源泉所得税額を圧縮した真正の事実に反する所得税徴収高計算書を作成したとして、1年5か月の業務停止処分を受けた事案もある。
 令和6事務年度における国税庁実績評価実施計画では、税理士法違反行為者への懲戒処分等にあたっては、違反行為に関する情報収集を充実させ、税理士事務所等に臨場して業務の調査や実態確認を的確に実施。また、にせ税理士については業務停止を指導し必要に応じて捜査当局と連携を図り、脱税相談等を行う者には税務相談の停止等の命令を検討するなど、税理士業務の適正な運営を確保するため的確に対応する方針を掲げている。