▼視点
▽ニュース
▽税経相談室(税理士 安井和彦・三宮 修)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ(中小企業診断士 落藤伸夫)
▽所得税における判断指針となる重要判決(税理士 坂井一雄)
▽税務調査事例
▽インタビュー(岩佐理 関東信越国税局長)
▽裁決事例
▽資料〜令和6年度税制改正解説④(消費税関係)
▽インタビュー(松本善夫 税理士桜友会会長)
▽ティータイム

中小企業向けの来年度税制改正は

  令和7年度税制改正に向けた各府省庁からの改正要望が8月30日に出揃った。特例制度の新設要望は昨年同様に少なく全体的に既存制度の拡充及び期限延長を求める内容となっているが、経済産業省等は、中小企業における成長や規模拡大の促進、円滑な事業承継の後押し、持続的な賃上げや前向きな投資を支援するための改正項目を掲げている。

 国内投資の持続的拡充を図る観点からは、「中小企業経営強化税制」について、適用期限の2年間延長ととともに、売上高が100億円超える企業(100億企業)を目指す中小企業に対する上乗せ措置の創設を求める。令和3年経済センサスによると、中小企業336.5万者のうち、小規模企業は約285.3万者、それ以外の中小企業は約51.2万者でそのうち100億企業は現状4,500者程度と推計。外需と内需の取込みや賃上げを高いレベルで実現し地域経済の好循環を先導する、中堅企業への成長ポテンシャルが高い100億企業を各地域に更に創出するため、生産等設備の投資について即時償却又は最大10%の税額控除ができる同税制に上乗せ措置を創設し、中小企業者等の生産性と経営力の向上を図る。
 中小企業の活性化の観点からは、まず、非上場株式等・個人の事業用資産についての納税猶予及び免除(法人版・個人版事業承継税制)の特例措置について、骨太方針2024等でも示された役員就任要件の見直し等と、コロナ禍や物価高騰等の急激な経営環境の変化により事業承継の具体的な検討が遅れている経営者が多いことから、本税制の適用期間における事業承継の取組等も踏まえた円滑な事業承継の実施のために必要な措置について検討するよう求めた。経産省では、要望の見直し等措置により適用件数は年3,000件程度と見込んでいる。
 また、人手不足や物価高騰が続く厳しい経営環境において、中小企業における成長や規模拡大を促進するとともに持続的な賃上げへの好循環を生み出すため、一定の設備投資を行った場合に特別償却(30%)又は税額控除(7%)の適用を認める「中小企業投資促進税制」と、年間800万円以下の所得金額に対する法人税率を本則19%から15%に軽減する「中小企業者等の法人税率の特例」の適用期限をそれぞれ令和8年度末まで2年延長することを要望。
 今年も能登半島地震や台風10号上陸等の自然災害が発生しており、平成28年以降に災害救助法が適用された地域は42都道府県に及ぶ。このような災害発生に鑑みて、中小企業における防災・減災能力の強化が一層重要性を増していることから、事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業が対象設備を取得した場合に特別償却18%(令和7年4月1日以降に取得等をする場合は16%)が認められる「中小企業防災・減災投資促進税制」も令和8年度末まで2年間の延長を求めた。
 地方税では、赤字の中小企業であっても賃上げや前向きな投資を引き続き可能とするため、認定を受けた先端設備等導入計画の内容に応じて固定資産税の課税標準が軽減される「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」も同じく2年間の延長を求めている。