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会計検査院が指摘した租税徴収不足の中身は

 会計検査院が11月6日に内閣に送付した「令和5年度決算検査報告」によると、財務省に対し3億円を超える不当事項(徴収不足)を指摘している。税目別に徴収不足の金額や内容を見ていくと、毎年のように見直しが行われている特別措置や、企業がよく使う特例措置等に係るミスによるものも少なくない。

 決算検査報告は、各省庁や政府関係機関などの税金のムダ遣いや不正支出、経理処理の不適切などを指摘したもので、内閣に送付後、国会に提出され資料等に活用される。5年度の報告書では、無駄遣い等の指摘や改善を求めた件数は345件、その指摘金額は648億6,218万円にのぼる。
 このうち、財務省に関する法令違反に当たる不当事項として記載されているのが税金の徴収にあたっての過不足。5年度は全国の10国税局等及び74税務署に会計実地検査等が行われ、65税務署の納税者133人から137事項(件)、3億3,602万円の徴収不足を指摘した。前年度は55税務署において徴収不足は2億3,785万円だったので、徴収不足額だけみると約1億円多い。徴収不足を税目別にみると、「法人税」52件・1億4,581万円と最も多く、「申告所得税」29件・8,281万円、「消費税」23件・5,242万円、「相続・贈与税」25件・4,420万円、「源泉所得税」3件・327万円など。また国税局別では「東京国税局」が62件・1億7,479万円と最多で、「関東信越国税局」18件・6,944万円、「名古屋国税局」18件・2,312万円など。
 そして、気になるのが徴収不足の内容だ。最も徴収不足額の多い法人税では、毎年改正が行われている賃上げ税制関係での徴収不足が37件・4,762万円あった。その内容は、制度の適用要件である「雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額の金額を上回っていること」を満たしていないのに、これを見過ごし又は法令等の適用の検討が十分でなかったため、法人税額を過小のままとしていた。また交際費等の損金不算入に関する徴収不足が6件・1,043万円。内容をみると、資本又は出資を有しない法人が、資本相当額が1億円以下である場合の規定を適用して、交際費等の額のうち定額控除限度額までの金額を損金の額に算入していたが、実際は資本相当額を計算すると1億円を超えており損金算入額が過大となっていたことを見過ごして所得金額を過小のまま処理していた。
 また、その他税目でも①平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物について、定額法なのに定率法に基づいて減価償却費を計算(申告所得税関係)、②法定相続分算定の際に、半血兄弟姉妹の代襲相続人の法定相続分を全血兄弟姉妹の代襲相続人と同等として算定(相続税関係)、③退職手当に対する税額の計算に係る勤続年数の誤り(源泉所得税関係)などの指摘が行われており、単純ミスともとれる事案も含まれている。
 なお、徴収不足額は、同院の指摘後に全て徴収決定や支払決定の処置が執られている。
 徴収不足の未然防止策としては、納税者サイドでは申告書提出前の再確認、税務署サイドでは申告書のみならず添付等される「内訳書」をはじめとする各種資料との突合のさらなる徹底などが求められる。