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国税犯則調査手続のデジタル化への対応
昨年末に閣議決定した令和7年度税制改正大綱では、国税のほ脱・不正受還付など脱税等の犯則が疑われる場合に国税職員が実施する国税犯則調査の手続について、刑事手続のデジタル化との一体性に配慮しつつ、国税犯則調査手続のデジタル化に対応するための制度の詳細について令和8年度税制改正において結論を得ることとすることが明記された。
昨年6月に閣議決定した『デジタル社会の実現に向けた重点計画』では刑事手続のデジタル化を盛り込み、「刑事手続に関連する各種犯則調査手続について、各調査機関を所管する省庁等は、法務省・最高裁判所・デジタル庁等と連携しつつ、刑事手続のデジタル化との一体性に配慮し、可及的速やかに、犯則調査手続のデジタル化に対応するための法令及びIT基盤の整備を実現する。」と明記。刑事手続のデジタル化の実現のための法整備に関して、法制審議会の答申の内容を踏まえ、令和6年度中のできる限り早期の国会への法案提出に向け迅速に立案作業を進めるとともに、令和6年度からシステム基幹部分の設計開発を進めて令和8年度中にシステムの一部運用を開始するといった具体的な目標を掲げている。
この刑事手続のデジタル化について、法務省の検討会が令和4年3月にまとめた報告書では、刑事手続における電子データ化及びオンライン化の主な方策を示している。①現行の法律・規則において紙媒体で作成・管理・発受することが予定されている書類等を、電子データとして作成・管理し、オンラインで発受することができるものとし、電子署名など署名押印に代わる措置を講じて紙媒体と同一の効力を有するものとする。②捜索・差押え等の強制処分を行う場合に必要となる裁判官が発する令状の発付について、請求書及び疎明資料を電子データとしてオンラインで裁判官に送信し、令状の発付は電子データとして作成した電子令状を捜査機関に送信、電子令状は紙面印刷又は電子計算機の映像面表示での呈示とそれぞれできるものとする。③捜査機関は、犯罪捜査のため必要があるときは、裁判官の発する令状により、電子データを保管する者に対し、必要な電子データをオンラインで提供させることができるものとする。
国税犯則調査手続における現行の課題として、まず、犯則調査職員が作成する調書や告発書等は紙媒体により作成・管理し、質問調書等には法令で規定されている署名押印が必要なため、段ボール数十箱に及ぶ告発書類等を出力・割印しなければならない。裁判所や検察庁へ送付する令状請求や告発の際の資料も書面によることが規定されているため、段ボール数箱から数十箱に及ぶ紙媒体で持参し、着手当日の追加令状の請求も時間を要することとなる。また、平成29年度改正による権限強化により、犯則調査職員は裁判官の許可状を得て、電子データ保管者等に命じて、取引情報等のデータ証拠を記録媒体に複写等させ記録媒体の差押えが可能となったが、査察官が現場に臨場してUSB等に情報を移転して差し押さえるといった手間が生じている。
昨年秋に行われた全国国税局調査査察部長会議でも犯則調査手続のデジタル化に向け見直しを検討することとしたが、来年度改正でどのような結論を得るのか注目される。