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改正される租税特別措置の適用実態は

 財務省はこのほど令和4年度の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」を国会に提出した。中小企業者等の法人税率の特例などの法人税関係特別措置について同年度は146万2千法人が適用を受けたが、令和6年度税制改正で拡充・延長が行われる特別措置の適用実態はどうなっているのか。

 租税特別措置の改正にあたっては、与党税制改正大綱で明記しているとおり、税制の「公平・中立・簡素」の基本原則に鑑みて真に必要なものに限定していくことが極めて重要だと捉え、期限が到来するものを中心に各措置の適用実態を検証し、政策効果や必要性を見極めた上で廃止を含めゼロベースで、毎年度見直しを行うこととしている。
 今通常国会に提出された「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」は、令和4年4月から5年3月末までの間に終了した事業年度等において、税額または所得を減少させる規定等を適用した法人税関係特別措置について、令和5年11月末日までに税務署へ提出された法人税申告書に添付する適用額明細書に記載された事項を集計したもの。連結法人は1グループを1法人として集計。
 報告書によると、適用額明細書を提出した法人は146万2,156法人で、法人税関係の特別措置81項目について延べ234万8,819件の適用があった。主な種類別では、法人税率の特例関係(措置数2)は106万8,348件で特例対象金額は4兆4,357億円、税額控除関係(同17)は27万501件で控除額は1兆3,289億円、特別償却関係(同27)は3万9,275件で特別償却限度額等は8,369億円、準備金等関係(同11)は3,887件で損金算入額は6,575億円となり、適用件数及び適用額は特別償却関係を除き前年度より増加となった。
 令和6年度改正で見直し等が行われる租税特別措置の適用状況をみると、まず「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(賃上げ促進税制)」は、令和2〜4年度の3年間において、適用件数は9万9,355件→13万8,063件→21万5,294件、適用総額は1,650億円→2,430億円→5,150億円といずれも毎年大幅に増加。上乗せ要件の拡充に加え、中小企業を対象とした税額控除繰越措置や中堅企業枠の創設等の制度強化により、構造的かつ持続的な賃上げの実現が今後も期待される。
 中堅・中小企業によるグループ化に向けた複数回のM&Aを集中的に後押しするため、積立率の拡大や据置期間の大幅長期化を図る「中小企業事業再編投資損失準備金」は、適用件数70件、適用総額124億円と低調だが、改正では、認定からM&A実施までの期間を短縮するため認定プロセスの見直しも行われることから中小企業の事業承継に向けても更なる活用が望まれる。
 この他、賃上げ促進税制と同様に中堅企業枠を創設する「地域未来投資促進税制」は特別償却が141件・253億円、税額控除が222件・86億円にとどまるが、令和7年度末まで適用期限を2年延長する「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」は65万3,858件・3,636億円の適用があった。これら租税特別措置を上手く活用し、事業の成長・拡大に繋げていきたい。