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能登半島地震被災者支援特例法が成立

 去る2月21日、能登半島地震の被災者への税制支援である「能登半島地震被害者救済特例法」が参議院本会議で成立した。法案提出から6日間でのスピード成立となった同法に伴い、災害による損失を令和5年分所得税・令和6年度分個人住民税で減額できる措置が前倒しされ負担軽減が図られる。

 能登半島地震では、2月22日時点で石川・富山・新潟の3県で住家8,667棟が全壊し、死者は241人と大きな被害が出ている。
 震災での税制支援対応をみると、国税庁は1月12日に「石川県及び富山県における国税に関する申告期限等の延長」(地域指定)を行い、申告、申請、請求、届出及びその他の書類の提出並びに納付等の期限を延長。また総務省も1月9日に都道府県知事に「令和6年能登半島地震による被災者に対する減免措置等について」を通知して、被災自治体に地方税に係る申告等の期限延長、徴収猶予及び減免の措置等について適切に運営するとともに、市町村にも同様の措置を行うよう要請した。  そして、震災に伴い広範囲にわたる生活の基礎となる家財や生計の手段に甚大な被害が生じており、かつ、発災日が1月1日と令和5年分所得税の課税期間に極めて近いこと等の事情を総合的に勘案し、臨時・異例の対応が必要として2月16日に税制措置の法制化に向けた「令和6年能登半島地震災害の被災者に係る所得税法及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の臨時特例に関する法律」と「地方税法の一部を改正する法律」を国会に上程、21日に成立させた。
 国税関係では、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等に所得控除が受けられる「雑損控除」、所得税が軽減又は免除される「災害減免法」の適用について、令和6年分所得税申告での対応となるところを5年分確定申告で処理できるよう前倒しした。また、事業用資産等について損失が生じたときは、その損失の金額を令和5年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入できる「被災事業用資産等の損失の必要経費算入の特例」も適用可能とした。
 地方税関係でも、令和6年度分の個人住民税(令和5年分所得)において雑損控除の適用対象とする特例が創設された。審議では、参議院総務委員会で「地方税は個人住民税の雑損控除だけなのか」との質問が出され、松本総務相は、「東日本大震災時の特例の中にはすでに常設化されたものもあり、今回の地震にも適用できる。常設化されておらず地方税法において特例措置が講じられていないものについても、各地方団体において減免その他の対応が出来るようになっている。漁船などの償却資産に係る固定資産税に関してもそれぞれの状況に鑑みて、担税力が著しく減少していると認められる場合、条例で定めるところで柔軟に減免ができる」と説明。減免措置による自治体の減収は、一定要件を満たせば全額地方債の発行を可能とし、元利償還金については交付税措置をする」と発言している。
 発災日から約50日掛かっており対応の遅れを指摘する声もあるが、支援税制の手続きの簡素化を図るなど、被災者に寄り添うサポートの充実と復興が期待される。