▼主な内容
▽視点
▽ニュース
▽税経相談室(税理士 阿瀬 薫・安藤美和子)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ
 (中小企業診断士 落藤伸夫)
▽相続税の勘どころ
(東京富士大学大学院客員教授・税理士 佐藤 繁)
▽労務相談コーナー
▽世界の税金こぼれ話(税理士 川田 剛)
▽令和5年の企業倒産状況
▽税務調査事例
▽資料〜再生支援の総合的対策
▽トピックス
▽ティータイム


定額減税導入に向け国税庁の施策が加速

 国会審議の場が参議院に移った「令和6年度税制改正法案」の目玉である定額減税。法案が成立するであろう3月末に対して減税は6月からということで、事業者等にとって事務負担や時間的な問題が懸念されている。このような中、国税庁はスムーズな制度の導入のため周知・広報に力を注いでいる。

 物価高による国民負担の緩和とともに、デフレに後戻りさせないための措置として岸田首相の肝煎りで発案された「定額減税」。
 年間所得1,805万円以下の者を対象に、納税者及びその配偶者を含めた扶養親族1人(いずれも居住者)につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円を減税する。減税は、所得税は今年6月給与の源泉所得税から定額減税額分を控除して、引ききれない部分は翌月以降の給与から順次控除。住民税は6月の給与は住民税の徴収をせず、7月から令和7年5月までの11か月間、本来払うべき1年間の住民税から定額減税額を引いた額の11分の1を毎月徴収する。
 事業所得者等は、所得税は原則、令和6年分の所得税の確定申告(令和7年1月以降)の際に控除、住民税は第1期分の税額から控除を行い、控除しきれない金額は第2期分以降の税額から順次控除する。
 制度のスムーズな実施に向け大綱では、「源泉徴収義務者が早期に準備に着手できるよう、財務省・国税庁は、法案の国会提出前でも制度の詳細についてできる限り早急に公表するとともに、源泉徴収義務者向けのパンフレットの作成等広報活動を開始し、給付金担当を含む関係省庁や地方公共団体と連携しながら、制度の趣旨・内容等について、丁寧な周知広報を行うこと」が明記された。
 これを受けて国税庁では今年1月30日、ホームページ上に『定額減税特設サイト』を開設して、情報提供を開始。2月には「令和6年分所得税の定額減税Q&A」、「源泉所得税関係様式」を公表。
 今月も制度における給与の源泉徴収に関する一般的な質問や相談に対応するため「給与支払者向け所得税定額減税コールセンター」を開設(7月末まで実施)するとともに、個別具体的な事実関係の相談には所轄税務署の源泉所得税担当が面談に応じる。また、3月21日から5月末まで税務署主催による定額減税の概要や源泉徴収事務について「給与支払者向けの説明会」(参加費用無料)を開くほか、YouTube「国税庁動画チャンネル」での制度説明を行い、これらの施策により事業者等の疑問点の早期解決を図る。
 これまでも定額減税や定率減税は実施されてきたものの、今回は昨年10月の「消費税インボイス制度の開始」、今年1月の「電子帳簿保存法の電子取引データの保存義務化」などに伴い、事業者等は事務負担に追われてきた。定額減税事務は、社員ごとに減税額や給与調整期間がまちまちなど減税の管理業務を行う必要があり、事務負担が煩雑となることが指摘されている。
 国税庁には引き続き、税制改正法成立後の政省令を踏まえた制度の詳細や各種情報の提供により、事業者等の負担軽減に努めてほしい。