自ら手書きで作成した遺言書は、自宅内で紛失したり、遺言者の死亡後に発見されなかったり一部の相続人に書き換えられてしまうなどの“保管”の問題点があるが、その問題点を解消し相続のトラブルを防止する「自筆証書遺言書保管制度」が令和2年7月から全国の法務局(遺言書保管所)で実施され、今年3月末までに累計7万件超の遺言が保管されている。

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自筆証書遺言の保管件数が7万件超に

 遺言書は、公証人が関与して作成し公証役場で保管する「公正証書遺言」と、費用を要さず遺言者本人が一人で作成できる「自筆証書遺言」がある。このうち自筆証書遺言は、自筆証書遺言書保管制度によって、1件につき3,900円の手数料で遺言書保管所に預けることができ、自宅等での保管による紛失・亡失や相続人等の利害関係者による廃棄・隠匿・改ざんを防ぎ、遺言書の存在の把握が容易となり相続手続の円滑化が図られる。

 同制度で預けることができる遺言書は、民法第968条で定める自筆証書によってした遺言にかかる遺言書に限られており、財産目録以外の全文と作成日付及び遺言者氏名を自書し、押印する。財産目録はパソコンを利用したり不動産の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成できるが、その場合は目録の全ページに署名押印が必要。
 用紙サイズや確保しなければならない余白など様式も定められているが、法務省のHPからダウンロードすることが可能。この原本は、遺言者の死亡後50年間(画像データは150年間)保管されるため、万年筆など消えにくい筆記具での記入も求めている。
 遺言書を作成したら、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)に保管申請を行う。法務省HPからのダウンロードや法務局窓口で申請書を入手して作成し、予約した上で遺言者本人が遺言書保管所に行って手続きを行い保管番号が記された保管証を受け取る。この保管番号を家族等に知らせることで、保管した遺言書の閲覧や、相続開始後の遺言書情報証明書の交付請求が簡便となる。
 制度開始から今年3月末までの累計利用件数は、遺言書の保管が7万1,033件で閲覧請求は309件、交付請求は遺言書情報証明書が4,518件で遺言書保管事実証明書が6,356件。
 同制度のメリットは保管だけではない。公正証書遺言では、遺言書開封後に偽造や変造等が行われないようにするため、家庭裁判所で、相続人立合いのもと裁判官が封印されている遺言書を開封して日付・署名等を検認するが、保管された自筆証書遺言書は家庭裁判所の検認手続が不要。
 また、遺言者の死亡後、遺言書の存在を相続人等に法務局から通知されること。この通知には「指定者通知」と「関係遺言書保管通知」があり、遺言者があらかじめ指定した者への指定者通知は令和5年10月に対象範囲の見直しが行われた。受遺者・遺言執行者等のうち1名に限定されていたが、これらの者に限定せず3名に拡大され、相続手続をサポートする者等も新たに通知対象とすることができるようになっている。
 相続を巡る争いを事前に防止し、遺言者の最終意思を実現する自筆証書遺言書保管制度の利用はますます進むだろう。