▼視点
▽ニュース
▽国税局人事予想(名古屋国税局編)
▽税経相談室(税理士 阿瀬 薫・佐藤正太)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ
(中小企業診断士 落藤伸夫)
▽世界の税金こぼれ話(税理士 川田 剛)
▽相続税の勘どころ
(東京富士大学大学院客員教授・税理士 佐藤 繁)
▽資料〜消費税の仕入税額控除制度における
適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和6年4月改訂①)
▽資料〜令和6年分所得税の定額減税Q&A
▽(令和6年4月追加)④
▽ティータイム
コロナ後の経営環境にどう対応すべきか
中小企業庁がまとめた「2024年版 中小企業白書(案)」では、コロナ5類移行等により中小企業の経営環境に回復が見られる一方で、物価高騰や人材不足の課題に直面している中、十分な価格転嫁、持続的な賃上げ、賃上げの原資確保に向けた投資による生産性向上の取組の強化が不可決だと唱え、事業継続とその先の成長に向けた取組を示している。
コロナ禍においては中小企業の約半数が持続化給付金や雇用調整助成金、政府系・民間金融機関によるゼロゼロ融資を利用して、事業継続及び雇用維持に努め倒産件数や失業率は低水準にとどまった。そして2023年は、年末にかけて売上げの好転に一服感が見られたが中小企業の業況は高水準で推移している。
しかし、売上高がコロナ禍の落込みから回復している中で、原材料高に加えて人手不足が深刻化。月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引上げの猶予措置が昨年3月末に廃止されたことから、雇用者一人当たりの労働時間が減少し労働投入量を下押しする形となっている。その一方で、賃金・賞与の引上げや働きやすい職場環境づくりの整備が進んでいる企業では人材を十分に確保できており、白書では、経営戦略と一体化した人材戦略を策定した上で職場環境の整備に取り組み、人材の定着や労働生産性の向上にもつながる人材育成を図ることが重要だと提唱する。
今年の春闘では各業種で過去最高水準の賃上げ率となっているが、中小企業における人材確保・採用や物価上昇への対応として、業績が改善しない中で賃上げを行う企業が3割を超える。令和6年度税制改正では、赤字の中小企業に対しても賃上げを促すため賃上げ促進税制の税額控除を5年間繰り越せる措置が設けられたが、賃上げ減資の確保に向けては価格転嫁の促進が重要で、十分な価格転嫁のために、商品・製品の原価構成を把握して価格交渉を進めることが有効だと指摘する。なお賃上げ促進税制では、一定の大企業及び中堅企業は適用にあたりマルチステークホルダー方針の中で、大企業等と中小企業が共存共栄を目指す旨のパートナーシップ構築宣言の公表が必要だが、この宣言企業ではより多くの発注先と価格協議を行い価格転嫁にもより高い水準で応じている傾向にある。
経営改善及び再生支援に関しては、「中小企業活性化協議会」が令和4年度に受け付けた相談件数は過去最多の6,409件で、計画策定支援が完了したのは再生関係で1,067件、収益力改善関係で1,676件にのぼる。税理士が多い「経営革新等支援機関」の支援効果も高く、事業者の8割以上が支援機関を活用し、活用している事業者ほど利益が高いことも分析の結果明らかとなっている。
これらを踏まえ白書では、刻々と変化する外部環境に対応するため、小さな取組でも投資行動を行っていく姿勢が経営にとっても良い効果を与えると唱える。企業の成長には人への投資のほか、設備投資、M&A、研究開発投資などの投資行動が有効だとし、エクイティファイナンスを活用して資金調達を行って必要な経営資源を確保し、外部の市場環境にも目を向けながら自社にとって最適な成長投資を検討していく戦略が求められるとする提言を参考に経営を進めていきたい。