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見直し進む少額な減価償却資産の取扱い

 今年度税制改正では、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(以下、「少額減価償却資産の特例」)が適用対象を縮減の上、期限が延長された。多くの企業が少額な減価償却資産について損金算入制度を利用している中、近年、事務負担軽減等を理由に各損金算入制度において見直しが行われているが‥‥。

 事業などの業務で必要な建物、建物附属設備、機械装置、器具備品などの資産については、取得価額が10万円以上かつ耐用年数が1年以上の固定資産は減価償却資産として減価償却する。ただし、取得価額が、①10万円未満(または使用可能期間1年未満)のものは、購入した期に必要経費にできる「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度」、②20万円未満のものは3年間で均等償却できる「一括償却資産の損金算入制度」、③中小企業者等が取得する30万円未満のものは即時償却できる「少額減価償却資産の特例」があり、少額な減価償却資産については一定の要件を満たせばこれらを適用できる。
 そしてこれらの各措置は、税制改正で度重なる見直しが行われている。
 令和4年度改正では、利益の圧縮を目的に事業で使用しない「ドローン」や「建設用足場」など少額資産を大量取得して貸付を行い、資産取得年度に全額損金とし、翌事業年度以降に賃貸料を得る少額減価償却資産の制度を利用した“節税スキーム”を封じるために、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供する資産が除外された(上記①〜③の全てに適用)。また、これに伴い5年度改正では、償却資産に係る固定資産税について所要の措置が行われた。
 少額減価償却資産の特例については、先の令和6年度改正でも見直しが行われた。
 同特例は、青色申告法人の中小企業者や適用除外事業者に該当しない中小企業者または農業協同組合等で資本金等の額が1億円以下、常時使用する従業員数が500人以下など、一定の要件を満たした中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを限度に即時償却(全額損金算入)を認めるというもの。
 改正では、昨年10月のインボイス制度導入等による事務負担増加に伴い、さらなる事務負担に配慮する必要があるとして適用期限を2年延長。加えて、常時使用する従業員数について、出資金等が1億円超の組合等は300人(改正前500人)以下を対象とした。従業員数については、平成28年度適用から「1,000人以下」、令和2年度適用からは「500人以下」に引き下げている(連結法人も対象外に)。
 上記のように改正は数次にわたり行われているものの、企業が真に求めている償却資産の管理や申告手続き等の事務負担の軽減等については、進んでいないように思われる。適用期限が延長され情報機器や情報処理ソフトウェア等が取得し易い環境は続いているが、例えば、減価償却資産の取得価額についての基準が混在していることは事務負担増の一つと考えられている。今後の見直しに当たっては、士業団体が要望している“金額基準の統一”などの検討も必要があるのではないだろうか。