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インボイス制度導入からまもなく1年
昨年10月から導入された消費税の「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」も早いもので1年が経とうとしている。このほど、日本商工会議所が公表したインボイス制度の実態調査から現在の中小企業の対応状況を見てみる。
消費税の複数税率に対応した新しい仕入税額控除の方式である「インボイス制度」。
導入により買手が消費税の納税額の計算方法である「仕入税額控除」を適用するためには、インボイスの入手と保存が必要となり、売手がインボイスを交付するには、事前にインボイス発行事業者の登録が必要となる。また免税事業者はインボイスを交付できないため、買手は仕入税額控除ができないが、特例措置により買手には令和8年9月までは免税事業者からの仕入税額相当額の80%(同年10月〜11年9月までは50%)の仕入税額控除が可能とされている。
国税庁のまとめでは、今年3月末現在のインボイス登録件数は444万5,025件となっており、登録申請から通知までの期間の目安は、登録申請の開始後は2〜3か月掛かっていたが、直近ではe-Taxによる提出で約1か月、書面による提出で約1.5か月とかなり短縮された。
まもなく制度導入から1年を迎える中、気になるのが中小企業のインボイス制度への対応。9月9日に日本商工会議所・東京商工会議所が公表した「中小企業におけるインボイス制度等の実態調査」(有効回答数3,149者)結果によると、インボイス事業者への登録状況では、制度導入前に免税事業者だった事業者のうち、BtoB中心事業者では73.3%、BtoC中心事業者では24.9%が登録を行った。このうちBtoB中心事業者の登録しない主な理由(複数回答)をみると、「新たな事務負担が発生」(57.1%)、「新たな税負担が発生」(47.1%)、「取引先からの要請がなかった」34.3%となっている。免税事業者からインボイス登録した事業者の経営状況では、「減収した」54.9%、「変わらない」41.3%、「増収した」3.8%で、半数以上が減収と回答。また、納税額を売上税額の2割に軽減する特例措置を事業者の85.5%が適用し、そのうちの85.2%は「スムーズに消費税を申告できた」としている。導入前から懸念されていたインボイス発行事業者のコスト・事務負担だが、回答をみると「コスト増加」は48.4%、「事務負担増加」は82.2%に達している。内容では、コスト増(複数回答)は「既存システムの改修」(32.4%)や「税理士への顧問料」(25.0%)など、事務負担増(同)は、「仕入れ先のインボイス登録状況確認」(66.0%)等が多い。
元々課税事業者でインボイス登録した事業者の免税事業者への対応をみると、制度の導入後も取引を「ほぼすべて継続」した割合は74.0%と7割を超えたが、今後も継続予定の事業者は47.1%とかなり減少する。一方の免税事業者の今後の登録申請については、BtoB中心事業者の64.0%が検討、BtoC中心事業者の69.5%はしないとしているが、再来年以降の特例措置の縮減・廃止が迫ってくると免税事業者の対応等にも変化がみられるかもしれない。