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気を付けたい法務局の休眠会社への整理作業

 今年も法務局による長期間登記がなされていない株式会社、一般社団法人及び一般財団法人(休眠会社等)の整理作業が実施される。対象となると期限内に必要な登記等を行わないと、現在事業を継続していたとしても「みなし解散の登記」が行われてしまうので注意が必要だ。

 会社法の規定により、株式会社の取締役の任期は、原則として2年(最長10年)とされ、取締役の交替や重任の場合には、その旨の登記が必要とされている。そのため株式会社については、取締役の任期ごと(少なくとも10年に一度)は取締役の変更登記が行われる。一般社団法人及び一般財団法人の理事の任期は2年とされている。また登記事項に変更があった場合には、役員の任期満了から2週間以内に変更登記を行わなければ、会社の代表者、外国会社の日本における代表者は、裁判所から100万円以下の過料に処せられる可能性がある。
 そして役員の変更の登記等をしないまま最後の登記から、12年を経過した株式会社は「休眠会社」、5年を経過した一般社団法人又は一般財団法人は「休眠一般法人」として扱われる。この休眠会社等は、既に事業を廃止し実体がない状態となっている可能性が高く、これらを放置することは商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになるほか、休眠会社等を買取り、犯罪の手段として悪用するなど社会問題となった事例も散見されるため、法務省は昭和49年より休眠会社・休眠一般法人の整理作業を実施している。作業は当初5年毎に行われていたが、平成26年度以降は毎年実施されている。
 整理作業の流れは、毎年10月頃に法務大臣による「休眠会社または休眠一般法人は、公告から2か月以内に必要な登記をせず、「まだ事業を廃止していない」旨の届出もされないときは、解散したものとみなされる旨」の官報公告が行われ、それとともに管轄の登記所が法務大臣による公告が行われた旨の通知書を休眠会社等へ送付。休眠会社等は公告後2か月以内に、役員変更等の登記の申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出を行わないと翌日付で解散したものとみなされ、登記官により職権で解散の登記が行われる。昭和49年から昨年までに株式会社70万6,151社、一般社団(財団)法人1万2,157法人が解散したものとみなされ、みなし解散登記が行われている。今年の官報公告は10月10日、申請や届出の期限が12月10日の予定。
 なお、最後の登記以降に登記事項証明書や代表者届出印の印鑑証明書の交付請求を行っていても、また登記所からの通知書が何らかの理由で届かない場合でも対応をしなければみなし解散の対象となる。役員の任期満了後に全員が再任された場合、役員変更の登記を行う必要がないと思ってしまう場合もあるようだが、上記のように実際には任期満了により退任した役員が再び就任することになり役員の登記事項に変更が生じるので、役員変更の登記が必要となる。
 会社及び一般社団(財団)法人の代表者等としては、登記状況の定期的な確認はしておきたい。