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見直されるか類似業種比準価額の計算式

 取引相場のない株式の評価にあたり、事業内容が類似する上場会社の株価を基に利益金額等の要素を加味して算出する「類似業種比準価額」の計算式等について、会計検査院が検査を実施した結果、別の原則的評価方式に比べて評価額が相当程度低く算定されることが判明。国税庁に対し評価制度の適切な在り方を検討するよう求めたが、見直しは行われるのだろうか。

 相続・贈与等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価は、財産評価基本通達において、評価する株式の発行会社(評価会社)の規模に応じて大・中・小会社に区分し、その区分に従ってそれぞれの会社に適用すべき原則的な評価方式(原則的評価方式)を定めるとともに、少数株主など会社支配権のない株主の取得した株式についても特例的評価方式として配当還元方式を定めている。
 原則的評価方式には、類似業種の株価を基に、評価会社と類似業種の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額の3要素を比較して求めた比準割合を乗じて、会社規模区分ごとに定められた割合の相当額によって評価する「類似業種比準方式」、課税時期における評価会社の資産の合計額から負債の合計額と評価差額に対する法人税額等の相当額を控除し、課税時期における発行済株式数を除して求めた金額により評価する「純資産価額方式」、この2方式を基に定数等を乗じて求めた金額により評価する「併用方式」がある。
 また、原則として、大会社の株式は類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式で評価することとなっているが、選択により大・中会社は純資産価額方式、小会社は併用方式での評価も可能だ。
 この評価方法のうち、純資産価額の計算式等は昭和53年以降改正が行われていないが、類似業種比準価額の計算式等は昭和41年から平成29年にかけて、対象評価会社や選択できる類似業種の範囲拡大及び計算式見直しなど評価額に影響を与える評価通達の改正が行われた。この改正を背景に、各評価方式による評価額に開差が生じているとの意見が出ていたものの特段検証されてこなかったことから、会計検査院が評価方式間で公平性が確保されているか検査を実施。令和2・3年分の相続税及び贈与税の申告のうち、相続等により取得した財産に取引相場のない株式がある申告リストから、原則的評価方式により株式の評価を行っている申告を無作為抽出し検査した。
 その結果、評価明細書で類似業種比準価額と純資産価額が算定されていた会社について価額を調べたところ、類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値の約3割にとどまり、評価会社の規模区分が大きいほど純資産価額に比べて低くなっていることが判明。評価方式間で評価額にかい離が生じていることで、類似業種比準価額を適用する割合がより高くなる規模の大きな区分の会社ほど評価額が相対的に低く算定される状況にある。
 この状況は、類似業種比準価額の計算式等に係る数次の評価通達改正等の影響で拡大したと指摘。異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間での株式の評価の公平性が確保されていないとして、評価制度の在り方が適切なものとなるよう検討することを国税庁に求めた。