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手形・小切手の全面的電子化に向けて
政府が2021年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」で示した約束手形・小切手の利用廃止の方針に基づき、一般社団法人全国銀行協会は検討を重ね、このたび「2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する」ことを決定した。これにより紙の手形・小切手の全面的な電子化が加速することとなり、早期の電子的決済サービスの移行が望まれる。
支払・受取企業の双方に省力化や業務効率化のメリットがある手形・小切手の決済手段の電子化について、政府の成長戦略実行計画等の方針の下、産業界と金融界が連携して2026年度までの全面的な電子化を目指して取組みを実施。その一つとして、全国の手形交換所を経由して人手で搬送していた従来の金融機関間の手形・小切手の交換業務について、イメージデータの送受信で交換が完結する「電子交換所」を2022年11月に設立して紙の手形・小切手を引き続き利用可能としつつも、2026年度までの全廃に向けて電子記録債権やインターネットバンキング等の決済手段への移行の取組みを進めてきた。
実際に手形・小切手の利用枚数は、ピーク時の1979年には約4億4千枚だったものが、2003年には約1億4千枚と3億枚減り、電子交換所設立後の2023年には2,468万枚とピーク時の約20分の1にまで減少。翌2024年中の電子交換所における手形・小切手の交換枚数は1,967万枚で、その内訳は手形が974万枚、小切手が993万枚。関係機関等が電子決済手段への移行に係る周知や電子的決済サービスの普及促進等の取組みを進めた結果、2020年からの5年間で2千万枚以上の減少となり一定の成果が見られているが、ここにきて削減ペースは鈍化傾向にあり、このままのペースで推移すると2026年度末時点の交換枚数は月間78万枚も残る見込みとなっている。
そのため全国銀行協会は抜本的な取組みを行うこととし、2027年度4月に電子交換所における手形・小切手の交換の廃止を決定。これ以降、手形・小切手が全く使用できなくなるわけではないが、金融機関が手形・小切手の取扱いを継続する場合には、電子交換所を介さない郵送等による相対決済(個別取立等)を行う必要があるため、各金融機関の判断により取扱いの変更が行われる。
例えば三井住友銀行では、今後の予定として、今年9月30日をもって手形・小切手帳の発行申込の受付を終了し、翌10月1日以降は手形・小切手・定額小為替による口座への入金受付時の「取立(入金扱)手数料」を新設。2026年9月30日を手形・小切手の最終振出期限とし、2027年3月下旬に手形・小切手の取立受付を終了することとする。なお、同年4月1日以降が期日となる取立受付は既に停止している。
手形・小切手の全面的な電子化にあたり、導入サポートや専門スタッフ派遣等のサービスを提供している金融機関もあり、電子化へのシフトはWEB申込が可能となっている。コスト・事務負担の軽減やリスク低減に資する電子決済システムを未導入の事業者は、紙の手形は電子記録債権(全銀電子債権ネットワークが取り扱うでんさい等)に、紙の小切手はインターネットバンキングによる振込に早期に移行することが望まれる。