▼主な内容
▽視点
▽ニュース
▽税経相談室(税理士 三宮 修・森田 修)
▽企業法務の実務(弁護士 木島康雄)
▽税理士ができる伴走支援のススメ(中小企業診断士 落藤伸夫)
▽税務調査入門〜
 調査対応から不服申立てまでの基礎知識〜(税理士 坂井一雄)
▽税務調査事例
▽裁決事例
▽トピックス
▽ティータイム

4月から開始する相続人申告登記

 不動産登記法改正に伴い、相続で不動産を取得した相続人に対して相続登記の申請を義務付ける「相続登記の申請義務化」が今年4月1日から施行される。この相続登記を相続人が簡易に履行できるようにする観点から、負担の軽い新たな手続として「相続人申告登記」も創設され同日からスタートする。

 相続登記の申請義務化により、土地・建物の不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に法務局に登記申請する必要があり、遺産分割の話合いで不動産を取得した場合にも、遺産分割から3年以内に登記を別途しなければならない。そのため、相続人の間で早めに遺産分割の話合いを行い相続登記をする必要があるが、早期の遺産分割が難しく、相続登記の義務の履行期限が迫っている場合等には、「相続人申告登記」という簡便な手続を行うことで義務を果たすこともできる。
 相続人申告登記は、遺言なしの相続により、不動産の取得を認識するも、当分の間は遺産分割を行う予定がなかったり、相続トラブルとなり遺産分割がまとまりそうにない場合等に、申請義務違反による過料を免れることができ、相続登記の履行義務を果たすために利用できる手続。相続による不動産の取得を認識した日から3年以内に相続人申告登記を行い、今年4月1日より前の相続開始分に関しては令和9年3月31日までが期限。その相続人申告登記後に遺産分割がまとまった場合には、遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果に基づく相続登記を行うこととなる。
 例えば、相続開始後に複数の相続人が法定相続分の割合で共有するも、そのうちの一部の者が相続放棄した場合には、他の相続人はその相続放棄を知った日から3年以内に相続放棄後の割合による相続登記の申請義務を負うこととなるが、相続人申告登記を行うことで履行が可能となる。そして3年経過後に遺産分割が成立し、成立から3年以内に遺産分割の登記を行うことで、相続開始時に遡って不動産取得が合意された相続人の単独所有が法的に認められることとなる。
 相続人申告登記の方法は、法務局(登記官)に対して、対象となる不動産を特定した上で、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と②自らがその相続人である旨を申し出ることで申請義務を履行したものとみなされる。相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が単独で申し出ることができるが、相続人の全員が義務を履行したとみなされるには相続人全員がそれぞれ申出することが必要。なお、他の相続人の分も含めた代理申出も可能。申出に必要となる添付書面は、申出をする相続人自身が被相続人の相続人であることが分かるその相続人の戸籍謄本を提出することで足り、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍関係書類までは要しないなど、添付省略等の方策も導入する。
 遺産分割後の登記義務を相続人申告登記では履行できず一時的なものであることや、不動産についての権利関係を公示するものではなく効果が限定的であることに留意が必要だが、相続人が重病だったりいわゆる争族により遺産分割で揉めている場合には相続における有効な選択肢となろう。