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利活用が低迷するマイナンバー情報照会
会計検査院の「マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について」(令和4年度分)によると、自治体の地方税や年金給付関連等に伴う事務手続の約4割でマイナンバーの照会実績が全くないなど、全体的にマイナンバー情報照会の利用頻度が低調なことや、手続において国民が不利益を被るケースが出ていることもわかった。
マイナンバーによる情報照会は、自治体がマイナンバーを利用して個人情報の照会システムにアクセス(情報照会)することで、国民が転居に伴う児童手当の申請などの際に必要となる住民票や課税証明書の写しといった添付書類の提出などが省略でき“費用負担の軽減”が図られ、自治体も他自治体への情報照会をオンラインで行え、“行政の効率化・迅速化”が図れるとして導入されたもの。
令和4年度分は、全国から451自治体(11県・435市町村など)を抽出し、デジタル庁や総務省など7府省庁のデータを用いて、自治体などが情報照会可能な1,429種類の事務手続のうち、地方税や年金給付関連など1,258種類について利活用状況の確認が行われた。
確認の結果、照会件数は3,029.5万件と過去最高となり、個人情報の種類別では「地方税関係情報」と「年金給付関係情報」で全体の85.6%を占めている。一方、手続別でみると、照会した自治体が「半数以上」だった手続は33種類、「1割未満」だった手続が649種類で、『個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用に関する事務手続』など全体の38.5%に当たる485種類は全く利用されていないことがわかった。
また検査院は、デジタル庁が所管府省庁に対し照会状況の情報を提供していなかったことや、所管府省庁が自治体の照会件数など情報照会の実施状況の把握が不十分だったことを挙げたほか、自治体の取組みだけでは低調な照会状況の解消が困難な問題が見受けられること、自治体において情報照会を利用せずに申請者等に発行手数料を伴う課税証明書等を提出させていたことなども明らかにした。
その上で検査院は、「本来ならマイナンバーカードを行政の窓口に持参するだけで申請できるのに、手数料を支払って住民票の写しを提出するなど住民側に負担が生じた恐れがある」として、デジタル庁に対し情報照会の利活用を主導するよう求めた。これに対し同庁は、マイナンバー制度全般を推進する立場として重く受け止めており、利用推進の取組みを支援していくとコメントした。
全国的な情報照会のネットワークシステムの整備・運用、自治体システムの改修に令和4年度までで総額約2,100億円が投入されているが、さらにデジタル庁では現行システムが更新期を迎えているとして、新たに数百億円を投じて機能強化を図るとしている。
情報照会の未実施理由として、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」「業務システムから情報照会ができない」といった意見や、「添付書類を提出してもらった方が効率的」との意見が出ている。自治体職員がシステムを使いこなし、国民が利便性を実感できるようにすることが、マイナンバー自体のイメージアップにも繋がっていく。